何で気づかなかったのだろうか。 何でこんなに大事な事を、もっと早くに気付けなかったのだろうか。 もっと早くに気付ければ、いくらでも対策は練れたはずだ。 昨日の自分を恥じたい。というか、今すぐタイムマシンで昨日に行って、自分に説教をしたい。 いや、説教じゃ足りない。折檻だ。拷問だ。五寸釘だ。爪剥がしだ。 とにもかくにも、今現在どうしようも無い事態になっているのだ。 「相性を全く考えていませんでした……」 そう、タケシは岩ポケモン使いだとグリーンに言われたのに、だ。 ルナのポケモンは電気タイプのピカチュウと炎タイプのロコン。相性は全くもって悪い。 他のポケモンを捕まえるとか、家のポケモンを持ってくる事も可能だが、何しろ時間が無い。 「どうしましょう……」 そんなこんなしていると、ポケモンセンターにも行けず、時間は刻一刻と迫っていた。 不安そうにピカチュウとロコンがルナを見つめる。 「だ、大丈夫だよ! 相性なんて……相性なんて……」 関係無い。その一言が出てこなかった。 それは、ルナが相性が有利だと戦いが有利になる、という考え方があるからだった。 実際、それで勝つ所を見てきたし、経験してきた。 「とりあえず……、ジムに行きましょうか」 * * * とりあえず、まだ自分が出るCブロックまでは時間がある様だ。そう思い、しばし観戦者になる。 「あれ、あれは……」 現在やってるBブロックには見知った顔があった。 「れ、レッド君!? と、というかピカチュウじゃないですか!?」 もしやなついたのか、と思うもどうやら違うらしい。 ピカチュウがレッドに攻撃したりと全く昨日から進展している様子は無かった。 しかもタケシが遊ばれているのかと怒りが頂点に達し、大きな技を繰り出そうとしていた。 気が付いたら自分でも驚く位に大声でルナは叫んでしまっていた。 「レッド君、危ない!」 「 「とどめだ!ロケットずつき!!」 巨体のイワークがピカチュウへと真っ直ぐ、凄いスピードで突進してくる。 その光景に思わず目を覆いたくなるが、緊張なのかなんなのか、体がピクリとも動かなかった。 しかし、次の瞬間には目を見張る出来事が起きる。 レッドが あまりの出来事からか、これは反則にならないのか、とか呑気に思ってしまう。 レッドがピカチュウに何か喋りかけていた。 それはルナから離れてしまったから聞き取れなかったが、きっと大丈夫か、とか言っているのだろうとなんとなく想像できた。 なにより、ピカチュウが驚きながら優しい顔になった事がその証拠だった。 「 しかしタケシはもう一度ロケットずつき≠繰り出そうとする。レッドは背を向けていて気づいていない。 自然と胸の前で手を合わせて、願っていた。 レッドの思いが通じたのか、ピカチュウはイワークを睨み付け、その小さな体から電気を発する。 そして、自らの尾から強い電撃をイワークに浴びせる。 すると衝撃的な事に、イワークがバラバラになってしまった。 周りのギャラリーも何が起こったのかと目を白黒させる。 レッドは勿論、ルナまで唖然としてしまう。 レフェリーが黙ってレッドの手を挙げる。 周りは喝采に包まれた。 * * * 「ルナ、オレ勝ったぜ!」 「はい、凄かったです!!」 二人で興奮した様に語り合っていると、 『Cブロックの予選を開始します』 「あ……」 「ルナのブロックか?」 「は、はい」 「見ててやるよ」 「え……」と言葉を詰まらせるルナ。 不思議そうに見てくるレッドから目を逸らす。 まだ不安は残ってる……だが 「見てて下さい、私のファイト! レッド君の様に頑張ります!!」 「おう!」 * * * ルナがリング上に立つと周りがざわめきだす。 それもそうだ。まだ幼さが残る女の子が、しかもお嬢様の風格を漂わせているのだ。驚かないわけが無い。 遠くからはレッドの歓声が聞こえてくる。 「どうぞよろしくお願いします」 深々と丁寧にお辞儀すると、ゴローンを引き連れた体躯が良い男は「あ、ああ」と調子が狂うといった様な顔をする。 ←|→ [ back ] ×
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