息を吐くリナ。

それから、両眉を下げてすごく可愛らしい笑顔になる。

「あは、負けちゃった……」
「じゃあ……」
  私ね」

いつのまにかルナに背を向けていたリナが、後ろ姿だけで分かる位寂しそうにする。

それを見て、心が痛くならないわけが無かった。

「どちらにせよ、お姉ちゃんを止める気なんか無かったんだ……」
「え?」
「ただ勢いだけで言っちゃったの、本当は」
「……」

ルナは俯く。

それをちらりと見たリナは少し目を細める。

それから明日の方向を見る。

「そりゃあ、行って欲しく無いけど……、でもそれ以前にお姉ちゃんには自分のやりたい事をしてもらいたいと思ってるの」
「……」
「…………タウンマップ、忘れないでね」

それだけ言って去ろうとするリナ。

それに対して、何も言おうとせずただ俯いたままなルナ。

ピカチュウがその様子を見てただオロオロするばかりだった。

ルナはリナの気持ちを考えると自分を恥じたくなる。

  どうして気付かなかったんだろう。

あそこまで自分と別れる事が辛くなるだなんてわからなかった。

昨日は普通に対応されて、自分が居なくても大丈夫なんだろうと勝手に思い込んでしまった。

  謝りたい。

そう思い立ち、リナが立ち去った方向を向き、名前を呼ぼうとした時、

  !!」

リナがルナの腕の中に飛び込んできた。

その頬にはまだ真新しい涙がつたっていた。

「……リナ?」
「……っく、ひっ、く。お姉ちゃん  行かないで」
「!!」

しゃっくりをあげながら出た言葉はリナの本音だった。

それを聞いて、いつのまにかルナは妹をきつく抱き締めていた。

「お姉  
「やっと本音、言ってくれた……」
「え?」
「今まで、ずっと我慢しちゃって、何も言ってくれなかったから……」

思わぬ一言にリナは驚いた様に目を見開く。

それと同時に涙もぼろぼろ出てきた。

ルナもそれを見て、我慢していた涙が間髪入れずに出てくる。

声をあげて泣く二人。

しばらく二人は一緒に涙を流していた  


* * *



「じゃあ……いってきます」
「……うん」

それでもルナは旅をする事に決めた。

それが『二人』の為になると思ったから  

「あ、で、でも、なるべく早く帰るからね!!」
「……うん」

淡い笑みを見せる。

それにはまったく我慢や嘘は感じられなく、安息の息を吐く。

「あ、そうだ」
「ん?」
  気をつけて、ね」

ビクリ。

自然と肩を震わせる。

それもそうだ。リナがいきなり目を細め、眉を寄せて深刻な顔で自分を見つめているのだから。

怖気と似た物が体を這う。

「……じゃあ、行ってらっしゃい」

次の瞬間には綺麗な笑顔を自分に見せていた。

渇いた声で一つ返事するしか無かった。

こうして  ルナの冒険は少しの恐怖を残して始まってしまったのだった。


我慢しなくて良いんだよ
(気付かなくてごめんね)



「あれ、迷っちゃった」

「お姉ちゃん、あれだけタウンマップ持ってけって言ったのに忘れてってるよ……」

20120813


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