次の日。 リナは肩掛けカバンを提げたルナを目の当たりにし、鼓動が素早くなる。 「あ……、お姉ちゃん……行く、の?」 「………うん」 少し寂しそうに言うと、姉も寂しそうに言う。 互いに同じ事を考えているんだろうな、と互いに思う。 でも、きっとやらなければならない事なのだからしょうがない、とリナはその気持ちを押し殺した。 ルナもまた、やらねばならぬ事があるのだと自分に厳しく言い繕った。 まぁ、互いにその気持ちはバレバレな訳だが。 「……こんなに早くから行くの?」 遠回しに「まだ行かないで」と不器用に言うリナ。 「……うん」 「……………そっか」 ルナも少し不器用そうに答える。 「レッド君に追い付きたいし」。ポツリと呟くルナに素早く反応する地獄耳リナ。 「……レッド君?」 肩眉を上げ、ひきつった笑みを見せる。 なぜかそういう事に鈍感なルナは首を傾げながらなんとなしに言う。 「あ、レッド君っていう昨日、私と同じく博士に図鑑を貰った男の子がね 「やっぱりダメ!!」 「 目を点にさせるルナ。 その光景は鬼の様な形相のリナと相まってコミカルなシチュエーションを醸し出していた。 「男!? しかも『君』付け!? あの頭も態度もツンツンな奴でさえ『さん』付けなのに!!」 「あ、そういえば」 「無意識!? 無意識故の『君』付け!?」 「??」 マズイ、という顔を全力で出したリナにルナがハテナを沢山頭の上に浮かべている。 どうしてここまでこう鈍感なんだろうか。 リナが絶望仕切った顔でルナを見ると、なぜか可愛らしい笑顔が返ってきた。なぜだ。気付いてくれ。 「 「バトル?」 「うん。私に勝ったら旅に出て良いけど、私に負けたら……」 その先は言わずして理解した。 ルナは負けた時の事が頭に浮かび、喉を鳴らす。 あまりリナとバトルはしたくないが……仕方ない。 ルナは、リナの言う事を聞かずに勝手に旅に出る事も可能だろうが、素直に了承し頷く。 * * * 「勝負は一対一の入れ換え無しのバトル!」 「 相手は自分より二つ三つ位年下で、まだ幼いのにバトルセンスの高い、気の抜けない相手だった。 だからこそ、でもあった。 ルナがこの勝負を受けた理由は二つあった。 一つは リナは冗談無しの、真剣な心で言ったのだ。ただでは踏みにじりたく無かった。 そしてもう一つは 旅をするのなら、きっとこれから山やら谷やらの大変事が色々起こるだろう。 もしここで負けたら、きっと自分は旅をする資格なんてない。 そう思ってルナはこの勝負に快く引き受けた。 「……じゃあ、良い?」 「……うん」 『バトル ボン、と音がすると相手のポケモンと自分のポケモンが現れた。 リナのポケモンは ルナのポケモンは リナとしては、予想通りだった。 とはいえ、両者『二匹』ずつしか持っていないが。 「私の『パートナー』を出すと思った? 残念!」 「まだ始まったばかりだよ。チュカ電光石火=I」 「 ピカチュウが高速でイーブイに体当たりをする。 先攻を取られ、少し顔を歪ませるリナ。 だが 「イーブイ体当たり!!」 「チュカ!!」 ピカチュウが電光石火で着地をする前にイーブイから体当たりされ、勢いそのままに転がっていく。 自分の爪の甘さに唇を噛む。 しかし、後悔している場合でも無かった。 「チュカ、ジャンプ!」 「じ、ジャンプ?」 そんな技あったかな、なんて一瞬思った自分を恥じたい。 「回転!」 言われた通りにピカチュウが宙にいながら、回転をかける。 なんとなく電気を帯びている様な 「しまっ 「降下!」 気付いた時にはすでに遅く、回転をかけながら電気を帯びたピカチュウが勢い良くイーブイへと落ちてくる。 イーブイはピカチュウに触れ、痙攣しながら倒れた。 戦闘不能だった。 「……電磁波=v 通常は痺れさせるだけの「電磁波」だが、回転をかけた事によりダメージも与えられた、という事だろう。 技の命令無しでここまで出来るという事はそれだけポケモンと意志疎通がきくという事か ←|→ [ back ] ×
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