本選会場に駆け込むと、バトルフィールドは煙に覆われていて、丁度今、煙がきれる所のようだった。

バトルフィールドは亀裂が入っていたり、あぶったような後があることから、壮絶なバトルが繰り広げられていた事が分かる。

「煙がきれる!」
「あ…、あれは…」

ルナは一緒になって息を飲む。

煙がきれた先には、リザードンとグリーンが立っていた。

なぜかショックをうけてしまった自分がいる事に気付く。

『リザードン! 勝者! グリーン選…』

ナレーターが言いかけた時、グリーンの足がもろく崩れた。

そして、リザードンが力無く倒れた音が響いた。

『!!』

おおっ、と歓声があがったかと思えば、視界に影が見える。

あのシルエットは  

ルナは目が離せないでいた。

『イヤ! 勝者は…』

その人は何度もルナに希望をくれた人。


笑顔の温かさを教えてくれた人。



真っ直ぐな目で見てくれた人。



両親を誉めてくれた人。



自分を、大事だと言ってくれた人  



『レッド選手です!!』

レッドはニョロボン、フシギバナ、ピカチュウと共に立ち上がっていた。

真っ直ぐな目で、力強い目で、立っていた。

それだけなのにルナの心は感動したように沸き立っていた。

レッドは三匹に向き直った。

「ピカ、ニョロ、フッシー! 最後はおまえたちで決めることができてホント…良かった」

言っている内に、顔色が悪くなっていく。

「ありがとう……」

三匹にそう言って笑い、そして  ルナに笑いかけて倒れこんだ。

ルナはそれを見て青ざめた。

「レッド!!」


* * *



レッドが目を覚ましたのは本選会場の医務室のような場所。

決勝戦などで激闘を繰り広げたトレーナーは大抵戦い終わったらぶっ倒れるので、備え付けてあるらしい。

ふと、手が柔らかい感触に包まれている事に気付く。

ずっと手を握っていてくれたのだろうか。ほんのり汗ばんでいる。

「……ルナ?」
「レッド……!」

ぱあっと明るくなるルナの表情。

正直キュンときた様子。

「起きたばかりで辛いだろうけど、表彰式を始めないといけないの。……動ける?」

自然に敬語で無く話すルナに、レッドは目をパチクリさせる。

「ルナ、敬語……」
「や、やだ! 突っ込まないで下さいよ! ……空気読んで下さい!」

真っ赤な顔で恥ずかしそうに慌て始めるルナ。

なんだ、実は恥ずかしがっていたのか、といつものルナにホッとするレッド。

「……グリーンさんは先に会場に行ったよ」
「そうか。じゃあ、オレ達も行かないとな」

ルナは自分が行っても仕方がないと思ったが、他の三人にお祝いの言葉を言おうと口をつぐんだ。

「ありがとな。……ずっと手、繋いでてくれて」

そうにっこりと言うと、ルナは火が点いたように顔を赤くした。

うつむいて、首を振る。

「ん!」

今度はオレがルナの手を繋ぐと言うかのように、手を差し出してきた。

ルナは顔をあげるとにこやかな笑顔を向けられた為、少し恥じらいながらも向日葵のような笑顔で手を取った。


* * *



『表彰式をはじめます!』

アナウンスが聞こえたと同時に、ブルーが電話をかける音が聞こえた。

「もしもし? アタシ、ブルー。セキエイのポケモンリーグね、3位入賞しちゃったわ、ホホ。賞金もたんまりよ」
「はあ?」

マサキがすっとんきょうな声をあげる。

「オイオイ! そんなこといって…」
「だって3位だもん。ルナと同3位!」
「へ!?」

今度はルナがすっとんきょうな声をあげる。

まさか自分の名前がそこで出てくるとは思いもしなかった。

「アタシとリナって子で上に言っといたの! びっくりな事に、リナって口が回るのねー」
「な、何を……!?」
「ホホ。ヒ・ミ・ツ!」
「え、えぇ!?」

可愛らしく人差し指を立てて言うブルーに、ルナはわたわたしている。

更にまさかリナの名前がそこで出てくるとは思いもしなかった。

「大丈夫よ、オーキド博士も手伝ってくれたから、人を騙したわけじゃないから!」

今度はオーキド博士の名前が出てきて何が何やら。

「それから」

ブルーが図鑑を取り出す。

ルナは突き返されるのかと思い、顔を強張らせた。

しかしその考えは違うようだった。

「図鑑も兼用よ。貴女だけ使わないなんてそんな事させないわ」
「ブルー……」

優しく微笑むと、ブルーも微笑み返してくれた。

それは悪い事を考えた時の笑顔や、人を騙したりの笑顔と違い、眩しかった。

「ちょっとおー! あんたたちが来ないと始まんないじゃない。はやくう! レッド! グリーン!」
「早く来て下さーい!」
「わかったよ!」
「チッ! うるさい女達だ」

その時、ルナがピクリと窓の方を見た。

「どうしたの? ルナ」
「あ……、ううん。何でも」

いつでも感じていた。その視線を。

いつも目を背ける自分に、申し訳なさそうな顔をしていた。

でもこれからは、きっと向き合えるから  

だからまた、あの花畑に来て欲しい。

そう願ってルナは呟いた。

「さあ、マサラヘ帰ろう」


真っ白な旅路
(汚れ無きこの旅は)
(貴方と出会った時に)
(始まっていたね)
  ミュウ)


RED,GREEN
    &
BLUE,LUNA


Fin



20121212

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