ピカチュウが下から光を当てている為、丁度良い感じにホラーになっていた。

しかも、暗がりの中の不意討ちだった為、相当三人の心臓は跳ねた。

ゴーリキーがレッドを追いかけ始める。

「わぁ!!」
「!!」

レッドにゴーリキーの拳が迫る。

  危ないっ!

そう思ったルナだったが、何しろ手段が無かった。

ルナが持っているポケモンはピカチュウとロコンという、小さなポケモンだった。

ルナがどうしようかと考えあぐねている時、ビシという音がした。

顔を上げると、フシギダネがゴーリキーの腕をつるで食い止めていた。

それを見て、ルナがほっと息を吐く。

「ス、スゲェ!! は、博士、このフシギダネの攻撃は!?」

くる、と振り返るとオーキドは泡を吹いて気絶していた。

レッドはそれを見てがく、と脱力する。

「うわちゃー、どうすっかな? タネ…。フシギダネ…」

ウーム、と考え始める。

それを見ながらルナは、

  私には頼ってくれないんですね……。

と、思っていた。

だが実際問題解決法が浮かんでいるわけでは無かった。

二人で考えていると、後ろから「ブチ!」という音がする。

ゴーリキーがフシギダネのつるをちぎった音だった。

「危ないっ!!」

ルナがレッドを引っ張り、ゴーリキーの手を避けさせる。フシギダネはピカチュウとロコンにアイコンタクトをし、同じ様に避けさせた。

「さ、サンキュ……!」
「どういたしましてっ。……それより、方法を!」
「そうだな。くそっ! …何か方法は…?」

本を無数読んできたルナでも、応用は利かないようで。

  私、役立たずだ……。

じり……、と近づくゴーリキーを尻目に、そう涙目で悲しむルナだった。

その内に、レッドが外から漏れている光を見て、何かを思いつく。

「!! そうか…。もしかしたら…!」
「?」

ルナはレッドが何に気づいたのかわからず首を傾げる。

そしてレッドが古くなって固くなっている窓を思い切り開ける。

すると、日の光が一気にフシギダネへと注がれる。

たちまちフシギダネの背中の種が光だす。

刹那  そのフシギダネの種から光線の様なものが出て、それがゴーリキーにいきおい良く当たる。

そしてゴーリキーが  倒れた。

……ソーラービーム。

ルナがレッドを驚きの目で見る。

「…ソーラー…ビーム…。知っとったのか?」

いつの間にか気がついたオーキドがルナと同じ様な疑問を抱く。

「ううん。でも、背中に植物しょってるから、太陽が好きなんじゃないかと思って」
(は、博士いつの間に起きて……。それにしても、この方の発想は知らないからこその発想……。きっと、ポケモンの本を何冊も読んだ私には出来ません……)

ルナは、知らない事を罵倒するわけではなく、素直に羨ましく思った。

「……た、たいしたもんじゃ。ハ…ハハハハ…ウハハハハハ!!」
「?」
(い、いきなり笑うので壊れたかと思いましたよ……)

なんて、ルナが失礼な事を思ってる所  やはり無自覚  に、博士がレッドの手に何時の間にかボールに入れられたフシギダネを置く。

まさか、と博士の胸中を察しルナは心が踊る。

「フシギダネはキミにやろう。もう、すっかりキミになついてしまったようじゃしな。良いな、ルナ」
「はい、勿論!」

いきなり話をふられ、少しビクッとしたが笑顔で応対する。

「ほ、本当に? や、やった!」

凄く嬉しそうにする赤い彼を見てルナは負けない位嬉しそうに微笑む。

今まで博士から子供達にポケモンを渡す所を見てきたルナは、この貰った時の笑顔が凄く好きだった。生き生きとしたそんな笑顔が。

「それから、博士!   と……」
「ルナです」
「あー、ルナ! オレ、ドロボウしようと思って研究所に行ったんじゃないんです。強いポケモントレーナーになる方法が知りたくて…。実はゆうべ…」

レッドは昨夜、黒い男達が幻のポケモンの話をしていたのを聞き、

捕まえようと森に行き自分と同じ位の年頃の男の子と尻尾の長い白いポケモンと戦っている所を見ていると、

男の子は良いところで戦いを止め、それならば自分が、と自らそのポケモンを倒そうとするも、

自分のポケモンが1発で倒され、白いポケモンは去り、男の子も自分に戒めの詞を残して去っていった事を一部始終話した。

その話を聞いたルナの表情は先程までの笑顔は無くなり、段々としぼんでいった。

「………そうか…。なら、キミは強いとはどういうことだと思うかね?」
「…え?」

突然の問いに、目を見開いて驚くレッド。

「技がたくさんあることじゃろうか? 力量が高いことじゃろうか? それが強いポケモントレーナーかね?」
「………」

う〜ん、と頭を悩ませる。

「そうではない。大切なのは心なのじゃ! キミが先程ポケモンと通わせた心…。その心こそが、誰にも負けないポケモントレーナーとなるための道になるのじゃ」

博士は懐に手をかけながら問う。

「名は、なんといったかの?」
「レッドです」

そして博士は赤い箱をレッドに差し出す。それを条件反射の様に受けとる。

「これは『ポケモン図鑑』。キミがポケモンと出会うごとに、そのデータを記録していける」

パカ、と開いて中を見ると機械機械していて少し扱えるか不安になるが、それよりもどきどきが勝っていた。

「究極のポケモントレーナーになっとることじゃろう」

  …オレが、究極のポケモントレーナーに…。

「私も持ってるんです。一緒に頑張りましょう!」
「おぅ!!」


出会いと無力な自分
(私は何も出来なかった……)


20120416

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