あっという間にポケモンリーグ当日になってしまった。

勿論、その間はポケモン達の特訓をしたりもした。

たまに研究所に行って手伝っているが、オーキド博士は何かコソコソと用意しているようだ。

レッドとはあの後全く顔を合わせていない。

まだどんな顔をして会えば良いのかわからないのだ。

今だって、カチコチに緊張している。

「ついにやって来ました、ポケモンリーグ!」
「なんでそんなに緊張してるの、お姉ちゃん?」

その付き添いであるリナの言葉に、ぴたっと制止する。

「なっ、やだなー。テンションマックスですよー?」
「お姉ちゃんが私に敬語になるのは、大抵焦った時や隠し事をしている時」
「あぅ」

リナには全てお見通しのようだった。

「多分、トキワシティに行った時になんかあったんでしょ?」

更に図星をつかれてルナは溜め息を吐いた。

鋭い観察力を持ったリナは本当に凄いと思う。

そうルナが言うと、

「いや、お姉ちゃんがわかりやすいんだよ……」

と、同情した目で見られてしまった。


* * *



『ポケモンリーグ!!』

マイクを通して放たれた声に、多くの会場の人達が歓声をあげる。

そんな中、真っ白なリボンと向日葵色の髪を揺らしてルナが立っていた。

ギャロップがシャワーズに突進≠オてくる。

しかしルナもシャワーズも動かない。

相手のトレーナーがニヤリとした時、そのトレーナーの目の前でギャロップが吹っ飛んできた。

  ハイドロポンプ=B

先程のルナのカチコチに緊張している様子は無く、クールに笑っている。

パッと映像が切り替わる。

「わぁ、Bブロック一位通過です!」

大きな歓声を身体全身に浴びる。

なんだか凄く気恥ずかしくなってくる。

急いでリナのもとへ行こうと、ステージから降りた。

『各ブロック第1位通過者は決勝会場へ移動してください!!』

放送が入ってしまった。

(と、とにかく行かなきゃだよね……って、あれはブルー?)

見ると、丁度ブルーがニドラン♀を放した時だった。

ニドラン♀はトコトコと可愛らしく歩いていった。

するとニドラン♀は誰かのニドラン♂に可愛い音をたてて口づけをした。

(か、可愛い……)
「あらん。アタシのニドちゃんたら…こんなカッコイイBF見つけちゃって」

ブルーが怪しくツツツ……と釣竿を持ったオジサンに声をかけた。

もはや嫌な予感しかしなかった。

「おちかづきの印に、ポケモン交換してくださらない? そうね、アタシのビードルちゃんと、あなたのその強そーなバ・タ・フ・リ・ー〜〜」
「…は、はあ?」

ルナは溜め息を吐いた。

やはりブルーは故意にニドラン♀を放して、騙すつもりだったのだ。

そんな時、ルナの心臓を跳ねあがらせる声が聞こえてきた。

「オイコラー! ま〜た、そんなことやってんのか!?」

ブルーの肩も跳ねるが、ルナの肩も跳ねた。

「あ…アラ。レッド、どしたの!?」
「どしたのじゃねえっ! なんでおまえがここに…」

その言葉に、ブルーは親指で後ろの映像を指差した。

その画面には『Aブロック通過者BLUE』と表示されていた。

「〜〜!!」
「ホホ。予選は軽かったわね!!」
「ブルーがAブロック1位…」

驚いているようで、レッドは画面をまじまじと見つめる。

その時、ルナはブルーと目が合った。

「どうやらBブロックの1位通過者はルナみたいね!」
「え! ルナ!?」

ルナがいる事を知らないレッドは勢い良く振り返る。

そんなレッドに少し後ずさるルナ。

気まずそうな顔をしているルナのわかりやすい様子に、ブルーは勘づく。

「ルナ! なんで声かけてくれないんだよー」
「あ、あのですねレッド君……」
「だから、『レッド』って呼んでくれって言ったじゃんか! 後、敬語も」
「うー……」
「何か二人の間にあんな事やこんな事があったのねー。なるほどなるほど」
『無いよ!!』

二人のやり取りを見てブルーが納得したような口振りで言う。

すかさず二人が同時に否定する。

まぁ、無くもない事は無いが。

ブルーは「冗談よ」と悪びれた様子も無く、軽いノリで言う。

「さ・て・と。それじゃね、レッド、ルナ。決勝で会いましょ」

スカート部分を翻してブルーが人差し指を立てて走りながら言う。

「負けないわよ。……アタシだってマサラのトレーナーだもの!!」
『…え!? え゙え゙え゙え゙え゙〜〜!?』

二人は驚いたようにブルーを指差して、叫んだ。

パニックになる二人。

「な…なんだって!? ちょっ、ちょっとオイ!! 今なんて……」

そんな時、誰かがレッドとルナの肩を叩く。

「予選通過おめでとさん! これでベスト4やな!! 組み合わせ出とるで」

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