―トキワシティ―

「よーし、いい子だ」

ニャースに三人がにじりよる。

ルナがピカチュウの電磁波≠ナニャースを麻痺にさせる。

そこを見計らって、レッドがニャースにボールを投げる。

「それっ!」

ボン! という音がし、ボールの中にはニャースが収まった。

「よっしゃあ!」
「良かった〜」
「あと1匹じゃな」


* * *



「しかし…、追いかけているうちに、トキワシティまできてしまうとは…。老体にはこたえるわい」

博士が汗を拭いながらニャースのボールを見つめて言う。

「あとは……」
「フシギダネだけですよね」

レッドがルナの言葉を繋げる。

『フシギダネ』という言葉を聞いて博士の顔が曇る。

「ウ〜ム、あれは…」
「あ  ! いた!!」

レッドが博士の言葉をかき消す様に叫ぶ。

確かにレッドが指差す方向にはフシギダネがいた。

フシギダネが血相を変えて逃げ出す。

「あ!?」

急いで三人がフシギダネを追いかける。

「あの建物に入ったぞ!」

三人も建物へと急ぐ。

「それっ」

三人が入った建物は『トキワジム「閉鎖中」』という看板が建っていた。

もっとも、誰も見向きもしなかったが。

ギ……、と扉を開けてみると、蜘蛛の巣が出来てる位ボロボロな建物だった。

その少しの不気味さに人知れずルナがぶるりと震える。

ただ1人  いや、1匹がそれに気づく。

ピカチュウだった。

ピカチュウはルナの肩に乗り、安心しろとばかりにその自らの温かい体をルナの頬に擦り寄る。

「……ありがとう、チュカ」

その心優しく、また心強い行為に目を細め、笑顔で素直に礼を言う。

レッドはというと、像の様な物を見て「ふうん」と呟いた。

「フシギダネはどこ行ったかな?」

博士のみ、フシギダネを探していた。

「おお、おったおった」

フシギダネは端で不機嫌そうにオーキドを睨んでいる。

オーキドが満面の笑みを作り(ひきつっているが)フシギダネにおとなしくこっちを来るように言う。

しかし  

「ぐほっ」
「博士!? 大丈夫ですか!?」

フシギダネがオーキドの腹目掛けて突進して来たのだ。

ルナにだけはなついているが、今、フシギダネは目の前の敵、オーキドしか見えていなかった。

「こんの! 飼い主にむかって…!」

オーキドが恨めしげに見ると、フシギダネはより一層睨みを強くした。

  あれじゃあ、より警戒してしまう!!

ルナがフシギダネに近づこうとした時、レッドがオーキドの前に出る。

それに対してフシギダネがレッドを睨む。

「怖がらなくていいぜ、フシギダネ」
「………」
「怖いんだな…、そうだよな…。外に出るの、はじめてだもんな」
「!」

レッドはフシギダネの事を何も知らないはずなのに、フシギダネの事を言い当て、ルナが不思議そうに目を丸くする。

「研究所で見たとき、ほかのポケモンとは別にしてあったよな…。自分以外の生き物を見るの、はじめてだったんだろう?」
「………」

オーキドもレッドを不思議そうに見る。

「よしよし、おなかへってんのか?」

レッドがフシギダネを優しく撫でてあげると、フシギダネが嬉しそうに目をつむる。

そこへルナが近づいて来る。

「良かったね、フシギダネ……。良い人に出会えて」

ルナもレッドがした様に、フシギダネを撫でてやる。

ルナはフシギダネが『ありがとう』と言った様に感じた。

レッドはそのルナの優しげな、小さな向日葵が咲いた様な笑顔に魅了されていた。

そんな時  

メリ……。

『!?』

後ろから物音がする。

ルナは急いでピカチュウに周りを照らす様に指示をした。

『!!』

三人と二匹が振り向くとそこには  

「野生の…、格闘ポケモン、ゴーリキー!!」
「きゃあっ!?」


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