ゴールドバッジを思いきり機械にはめてピカチュウに向ける。

「さあ! いくぞピカ!」

ピカチュウは凛々しく瞳を吊り上げて、一生懸命身体を広げた。

しかし、辺りはシーンとして動かなかった。

レッドはすかさずブルーに「どーなってんだブルー!」と抗議の言葉を発する。

放置されたピカチュウがオロオロとして可愛らしく、そして可哀想だった。

側にルナのピカチュウが近寄り、背中をぺちぺちと叩いて慰める。

その二匹のピカチュウの様子を見て和やかな気持ちになるルナ。

ナツメはそんな光景に、余計に苛立った風になる。

「……ええい。こぬならいくぞ!サイケこうせん!!」
「うわっ!」「きゃっ!」

ついに痺れを切らしたナツメはユンゲラーに技を命じる。

三人は慌てながらなんとか避ける。

ブルーが避けてから爽やかな笑みをレッドに向ける。

「レッド、ごめんね」

全く悪びれた容姿も無く、語尾にハートを付ける始末だ。

レッドが頭にハテナを浮かべたような顔をすると、ブルーは髪を耳の後ろに掻き上げる。

すると、ブルーの耳に光る物が。

「あ!」
「そのバッジ!」
「あの時返したのはニセモノよ、ホホ。せっかくのバッジをそう簡単に返したりするもんですか!」

ブルーの耳にはイヤリングのようにしたグレーバッジとブルーバッジが付いていた。

赤い舌をチロリと出す。

しかも挙げ句の果てに逃走した。

「あとはまかせたわ!」
「な! ブ…ブルー! あ…のヤロウ!」
「さ、さすがブルー……」

レッドは顔を真っ赤にして怒りに震え、ルナは分解の余地も無いと言うように呆れ顔で呟いた。

「フン、仲間われか、しょせんはガキども」

余裕の表情で言うと「いでよ、ファイヤー!」と炎の伝説の鳥ポケモンを出す。

「ユンゲラー! フリーザーとサンダーを呼び戻せ!」

そう言うと、二匹が突然姿を表す。

先程サンダーとフリーザーが居ることを認識したレッドはさほど驚かないが、ルナは何が起こってるのかとパニックになっていた。

(そういえば、前にフリーザーがロケット団に捕まりそうになっていた……)

そう思いフリーザーを見ると、操られているのか、こちらを睨み付ける。

少し、いや相当凹む。

ナツメが「フフフ…」と妖しい笑みを浮かべる。

「どうしますか……?」
「モチロン  

戦う。

そうレッドが言おうとした時、急に後ろからまばゆい光が部屋に入ってくる。

『!!』
(!? な…なんだ!?)
(な……なに!?)

驚いて二人が勢い良く振り返った。

「フフ…きたな!」


方向もわからないまま
(何が起こってるの……!?)


20121204

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