インターホンの音が辺りに響く。 赤い少年 ……が、誰かが出てくる気配は全くなかった。 「誰もいないのかな?」 困ったレッドはふと、ドアノブに手をかける。すると、ガチャ、と音がして扉が開いてしまった。 「ありゃ!? カギ開いてたのか!」 レッドは入るつもりはなかったが、閉める直前に気になるものを見てしまい、思わず中に入っていった。 暗い研究所の中で見たものは数多くのモンスターボールだった。 レッドはこんなにモンスターボールが並んでいるのを見たことがなかった。 思わず感嘆の声を漏らす。 「ス、スゲェ……。これ、全部ポケモンだよなあ」 研究所の角まで行ったレッドは、ポツンと一つだけ置いてあるモンスターボールを見つけた。 そしてそれをパッと素早く手に取った。 「? なんだろ?」 モンスターボールの下の方のシールに、女の子が書いたらしい綺麗な文字で名前が書いてあった。 「『フシギ……ダネ』。アハハ、背中に種があるのか! へ そしてレッドが何かを思いついたように自分の腰のボールを取る。 「ホラ、見てみろよ、ニョロゾ!」 そう言って自分のポケモン、ニョロゾとフシギダネを向かい合わせる。 すると、なぜだかフシギダネが入っているボールがガタガタと震える。 丁度その時、レッドの後ろの扉が開く。 そこには博士と、その後ろに可愛らしい向日葵のような髪色の少女、ルナがいた。 同じ位の年の少女なんて、なんだかんだこのマサラタウンでは初めて見た気がする。 無邪気な年下の女の子とは違った雰囲気を持つ彼女を、レッドは好奇の目で見つめた。 しかし、博士がレッドを見るなり、 「こんの……、ドロボーめ!」 と言ってレッドに近づくものだから、当然レッドの意識はルナから博士に。 「博士、落ち着いて下さい……」 「あ、あの……。いや、オ、オレは……」 ルナが博士をなだめるが、博士はまるで聞かずレッドに迫っていく。 レッドが後退し、よろつく。 「わとと…」 すると『カチ』という音がし、それに反応するように博士とルナが同時に大声を上げる。 『あああ!! それは!』 「えええ!?」 後ろからプシュ〜という音がし、モンスターボールが開いたとおもったら中からポケモンが飛び出した。 「うわあああ!!」 「 博士とレッドが驚いている中、ルナは素早く反応し、ピカチュウとロコンを出す。 「チュカ電磁波=I ロコ鬼火=I」 そしてそれぞれに動きを止められる技を命令した。 電磁波≠ニ鬼火≠食らったポケモン達はぼとぼとと床に落ちる。 「さ、さすがルナじゃ……」 「でもまだ逃げてしまったポケモンが居ます……! 早く捕まえないと!」 「なんてことするんじゃ、この悪ガキ!!」 「そ、そんなワザとじゃ……」 レッドが言い切る前にポッポが飛んできて博士の顔に排泄物がかけられる。 「あ…」 と、ルナが自分に冷たい視線で見ている事に気付いた博士はレッドにも分かるほど悲しそうな顔をした。 すると博士の身体が震え始め、レッドに向かって怒鳴る。 「と、とにかく捕まえろー!」 「ハイ!」 八つ当たり感があったがレッドは黙って捕まえることにした。 〜数十分後〜 「あと何匹じゃ?」 「…ゼェゼェ…。…ええと…」 窓から外を見ながらルナが言う。 「何匹か……外へ出てしまったようですね……。私、探してきます!!」 「オ、オレもさがしてきます」 レッドが走りだそうとしたところで「おっと」と博士がレッドの服を掴む。 「逃げようとしても、そうはいかんぞコソドロめ!」 「博士! この人は 「ち、ちがう…! 勝手に部屋に入っちゃったこととポケモンを逃がしちまったことはあやまる…ります。でも、その前に戻さないと…」 博士は窓から夕陽を見ながら溜め息まじりに言う。 「ムリじゃよ…。今から始めると日が落ちてしまうじゃろ。ルナも」 「そんな! ダ 「ダメだよ、そんなの! と、とにかくオレ、さがしてきます」 そういって走って出ていくレッド。 レッドを見て目をしばたかせながらも、口元が緩むルナ。 それからレッドの後を追った。 「あの!! 私も一緒に探します!」 「! お、おお!」 レッドがほんのりと顔を赤らめて頷く。二人共夕日のせいだと自己解釈してしまったが。 すると後ろからチリンチリンと軽快なベルの音がした。 レッドとルナが振りかえるとオーキド博士が自転車で自分たちに近づいてくる。 「捕まえるっていったって、お前たちだけでどうするというんじゃ。外に出たら、わしもおった方がいいじゃろう!!」 「………」 「クス……」 なんだかんだ言ってレッドを心配している博士に二人がほほ笑む。 「それから、全部捕まえたあとはお前を必ず…、警察にひっぱっていくからな!!」 その博士の言葉にレッドが「やっぱり?」とずっこけ、ルナの微笑みが苦笑いに変わった。 ←|→ [ back ] ×
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