パズルガール | ナノ
 #13

 
──ピタゴラス組の場合。

 3人もいるピタゴラス組を、どうまとめようかと迷いながらも、とうとうその時間が来てしまった。

「お待たせ致しました、次はピタゴラス・ファイターの皆さんの番です!」

 今度こそはと、猫耳パーカーを脱ぎ、ゆっくりとした足取りで彼等の待機場所に入っていった。
 すると──

「ミツキ!マジカルここなはもっと!こう!です!!」
「いやいやいや!!なんでオレがこんな事しないといけないんだよ!?」
「頑張れー」
「あんたも呑気に眺めてんな!!」

 三月とナギがなにやら可愛らしいキメポーズをきめていた。



「oh!カナデ!」
「遅ぇよ!!もうちょっと早く来て欲しかった……!!」
「おー、もうちょっと遅くても良かったぞー」
「おっさん!コノヤロー!」
「え、えと……すいません?」

 マイペースオブマイペースな3人組に、呆気に取られる。
 思わず呆気に取られたようにぼおっと突っ立っていると、ナギがこちらに跳んでくる。

「さあ!カナデもマジカルここなをやるのです!!」
「え、ええ!?こ、こう、ですか!?」

 突然の事に戸惑いながらも、先程三月がやっていたポーズを決める奏。彼女の順応性が高くて三月は驚く。

「なにやらせてんだよ!つか、あんたも真面目にやらなくていいから!!」

 そんな事よりもレッスンだろ!と突っ込む、アイドリッシュ7の突っ込み役。
 先程から叫んでいて疲れないのだろうか。尋ねようかとも思ったが、「疲れさせてんのお前らだから!」と突っ込まれそうな気がする。口に出すのは止めておこう。

「でも、これもレッスンに良いと思いますよ!色々なキメポーズをやってみるのも勉強ですし」
「そうかぁ!?」
「と、いう訳なので大和さんもさぁ!」
「え、嘘。これおにーさんも巻き込まれる流れなの?」
「当然の流れだろ!」

 大和も巻き込まれると知った時の三月のテンションの上がり方は尋常では無かった。

「おにーさん、このノリに乗れない……」

 ふるふると首を横に振る大和。
 今まで散々傍観者を気取っていたのだから当然だと三月は無理矢理大和を引っ張ってくる。

「ではヤマトはこのポーズで!」

 両手を組み、人指し指だけを伸ばし、手で銃を撃つような真似事をしながら、ウィンクをする。
 ナギは容姿が端麗なので、そんなあざとい仕草も絵になっていた。

「……おにーさんがそれをやれと?」

 当たり前だが、口元がひきつっていた。

 確かに同じ22歳として、それは絶対に無理だと思った。自分だったら絶対やらない。

「恥を捨てるのもアイドルとして大事な事です」
「プライドという名の誇りを持つ事も大事だとおにーさんは思うなぁ」

 全身で嫌だと拒絶の意を表す大和に、なんとしてもやらせたいという感情が芽生える3人。

「大和さん、リーダーとしての覚悟を見せて下さい」
「ここじゃない、絶対。覚悟を見せるべき所はここじゃない」
「さぁ、ヤマト……観念するのです」
「絶対やだよ!!」

 大和よりも少しだけ背の高いナギが無理矢理羽交い締めにする。

「今です、ミツキ、カナデ!ヤマトにポーズをさせるのです!」
「やめろー!!」
「よっしゃ、十六夜さん!俺が手を掴んどくからポーズよろしく!」
「分かりましたー!」

 ぎりぎりと抵抗しようとする大和の腕を懸命に掴んでいる三月の隣にいき、彼の手を無理矢理動かす。
 不思議と彼の力が抜けたような気がする。さすがに疲れてきたんだろうか。

「……ねぇ、カナちゃん?」

 カナちゃん?と驚きながら顔を上げると、思ったよりも距離が近くてびっくりしてしまう。

「当たってるけど、わざと?」

 言われた瞬間、何を言いたいのか分からず固まる。

 それから彼の視線をゆっくりと辿っていくと、彼の腕に自分の胸が当たってるのが見えた。
 刹那──自身の顔に体温が集まる。

「なっ…………!!!!」

 ぱくぱくと口を動かすが、声にならない。
 しかも、わざと?ってなんだ。そんな訳が無いだろう!おまけに意地悪げな笑みを浮かべている所も憎らしかった。

「ふんぬぁ!!」
「ぐはっ!?」

 ナギに羽交い締めにされて隙だらけの鳩尾に拳をお見舞いする。

 三月もナギも、唖然とした様子でその光景を見守っていた。三月もナギも、紳士な性格なので「当然だ」と大和に呆れ果てていた。


「サイッテー!です!」


 その後、けっきょく大和は最低な事を言った事についての罰ゲームという事で、マジカルここなのキメポーズをやらされたのであった(奏は静かに笑いながら写真を撮って、大和の羞恥心を煽っていた)。



乙女心は秋の空
(彼女は思ったよりも)
(純粋だったようです)

prev← →next

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -