ピンポーン、と鳴るベル。

いつもは姉が軽い足取りでパタパタと向かうのだが、生憎今姉はいない。

だから自分が出るしか無いのだ。

はぁぁぁ、と溜め息を吐いて上げた腰は非常に重たい物だった。

「はいはい」

こんな広い家で、こんな玄関から離れた場所で返事したって聞こえないだろうが。

しかし返事してしまうのが人間の性(サガ)と言おうか。

自分がいた部屋から出て、真っ直ぐ廊下を進む。玄関はその先だ。

早く出ないと帰ってしまうだろうか、なんて考えても歩を速めないのがリナという人間だった。

ようやく広い玄関に辿り着くと、靴をトントンと履いて鍵を開ける。

もう相手が帰っていたら来た意味が無いという物だが、相手がいても対応するのが面倒臭い。

扉の向こうに気配を感じつつ、気を重くして、正反対に軽いドアを開ける。

するとそこには嫌〜な奴が。

「よう」
「帰れ」
「え、いきなり!?」

二の句を継げない位に、いきなりの言葉だ。

「いや、そんな事言わずに」
「帰れったら帰れ」

リナは目の前の、黒いパーカーを着た胡散臭い少年  リュウを追い払うようにしっしっと手を動かす。

やれやれ、とリナの対応には慣れっこなのか、リュウは困ったように笑った。

「御生憎様。今日はお姉ちゃんいないわよ」
「知ってるよ、情報屋嘗めんな」
「アンタ情報屋の腕自慢しにきたの? うわっ、うざっ」
「ちげぇよ……」

大袈裟な位に引いている彼女はどれだけ自分を追い払いたいんだろうか。

「お前へプレゼントだ」

ポケットに突っ込んでいた手から何かの箱を取り出し、それをリナの手に乗せた。

それは少し縦長の箱で、右上にはPFPと書いてあった。

その文字を見た瞬間にリナは沸き立つ歓喜に駆られる。

やべぇ、これは限定発売のゲームソフトでは無いか、と。

「え、わたしに?」
「お前以外にこんなマニアックなモン、誰がやるんだよ」

ケラリと笑うリュウにリナの瞳はキラキラと輝いた。

「なんでこれをわたしに?」
「え? だからプレゼント」
「別にわたしの誕生日でも無いじゃない」
「誕生日以外にプレゼントしちゃ駄目か?」

平然と言ってのける彼は、きっとこの言葉だけで何百もの女を落としてきたのだろう(そんな訳は無い)。

自分はそんな事にはならないぞ、とか思うが、なぜだろう。心臓が忙しないぞ。

「い、いらないわ。アンタに借りなんて作りたくないし」

そう言って素直になれずに突き返す自分はなんて馬鹿なんだ、とか思うがどうにもならない事位自覚してる。

リュウは突き返されたゲームをただじっと見るだげで、ふむ、と考え込んだ。

「わかった。じゃあ、それ捨てておいて」
「は?」
「オレ、これから仕事あるし。捨ててる時間無いしさ」
「なんでわたしが……」
「だからそれは捨てる物だから、拾っても良いんだよ」
「な……!!」

やっとリュウの思惑が分かって、リナは言葉を失った。

確かにそれなら借り貸しは関係無いし、筋も通る。

  が、明らかに自分にやるつもりな事は分かっていた。

「……ホントはさ、お前の喜んでる姿が見たかったんだけど、オレが相手だもんなぁ。まぁ、諦めるさ」
「ッ!」

そう言って背中を向けた。きっと帰るつもりだろう。

振り向きざまに見えた表情は、どことなく寂しい物だった。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ」

ぐっ、と引っ張られる手はなんて加減の知らない事だろう。

もしかしたら、行かせたくなくて必死なのかも知れないが。

顔を向けるとリナの顔はこれでもか、という位に真っ赤だった。

姉に対して位にしか見せない表情に戸惑う。


「そっ、そのっ、あ……ありがと、ね……嬉しかった……から」


俯いては顔を上げ、俯いては顔を上げ、を繰り返す彼女はなんと可愛らしい事だろう。

これがツンデレの脅威という物だろうか。

リュウは思わず「ぶっ」と吹き出してしまった。

「は……!? なんで笑うのよ!!」
「いやぁ、可愛かったから?」
「疑問系じゃない!!」

顔を赤くしながら乱暴にも蹴りをお見舞いしてくる彼女に、ひょいっと軽く避けると、一層怒らせてしまったようだ。

「二度と来んなぁぁぁあ!!」

その言葉は辺りに木霊し、帰る途中の姉も聞こえたらしい。



(苦労して手に入れた)
(甲斐があったなぁ、)


遅れてすみませんんん!!
な、なんだか微妙な出来な上になんかCPみたいな(゚p゚;)
でもこの組合せ好きなので楽しく書けました!
普段はへたれなリュウ君がへたれない(^^)
後、リナはリュウ君には敵わないんですよねぇ、色々と。
ゴールドとイエローが涙目な作品ですが、書き直しはいつでも!
想像と違う!って場合はいつでも言ってくださいね!
リクエスト有り難う御座いました!!

20140125 prev next
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