夢を見ていた。

どこかの町で、まだ名の知れていない悪の組織が動き出していた。

あそこは……確か  


♪ ♪ ♪



「ん……」
「あ」

目を開けると、そこには虫ポケモンがいた。

黄緑で、まるっこい芋虫ポケモン。キャタピーだ。

「アラ、キャタピー」
「へぇ……意外だなぁ、てっきり虫は嫌いかと」
「まぁ。それは偏見ですわよ」

失礼ね、とでも言いたげな目付きでアルトをじとっと睨む。

だが、確かに御嬢様となると、温室で育てられたイメージがあり、虫やお化けが嫌いな雰囲気はある。

一般人ならアルトの言葉に頷くだろうが、マリアはその見解に納得がいかなかった。

周りの「おパーティー」ばかりやっている御嬢様ならいざ知らず、マリアは自然を愛する御嬢様だ。

庭なんて自分が植えた花でぎっしりだ。

「虫だろうとお化けだろうと、ポケモンはポケモンですわ。『苦手』位なら許容範囲ですけれど『嫌い』だなんて言う人の気が知れませんわ」
「同感だよ!」

急にキラキラとした瞳でマリアを見た。

ちなみに先程からお姫様抱っこのままだ。

「ボクはポケモンが大好きだ! だから、『嫌い』って言う子が嫌なんだ!!」

アルトは意外にも熱い少年のようで、ポケモンへの愛を熱く語っていた。

「それは良いですが、頼みがありますの」
「ん? なんだい?」
「その足元のピカチュウを私に渡してくださる?」

言われた通りに足元を見ると、そこにはピカチュウがちょこんと座っていた。

凄く可愛らしいピカチュウで、尻尾に切れ目があった。

……怪我だろうか、

「切れ目は怪我では無くて、♂♀の違いを表すものですわ。ポケモン好きの癖に、そういう事は知らないんですのね」
「ええ、だってそんなの聞いた事無いよ……」

ひょいっとピカチュウを片手で持ち上げる。

意外に抵抗が無くて吃驚だ。

「まぁ、滅多にいませんもの」
「そうなの!?」
「後、数十年後に増えますけどね、今は本当に極一部ですの」
「へぇぇ……よく知っているね」
「これでもそれなりの知識は入れていますのよ」

そんな事を言われると、こっちがそれなりの知識も無い奴だという感じがするのだが。

「大人しくして下さいね」
「あれ、そのピカチュウ怪我してたの?」
「ええ。恐らくビードルでしょうね」

きっと毒針≠ゥ何かだと、マリアはいう。

マリアはピカチュウに手を翳(カザ)して、光をぼぅ……と灯らせる。

すると、ピカチュウは元気になったのか、ピコピコと耳や尻尾を動かす。

……可愛い。

「この子が仲間になりたいらしいですわ」
「おお! いいねぇ!」
「名前は……ニコラス、ですかね」
「え、どこのケイジだよ……というか女の子なんじゃないの!?」
「女の子らしいと思いますわよ?」

いや、どこがだよ、と突っ込みたくなるような発言だった。

「ちなみに、そのニドラン♂の名前は?」
「マリリンですわ」
「モンロォォォ!?」

果たしてこのネタは大丈夫なのかとさえ思うが、本当にこの少女のネーミングセンスは凄まじい。

今すぐ変える事をオススメしたい。

「そんなに文句を言うのでしたら、アルトが決めて下さいな?」
「ええ……そうだなぁ、ピカだとなんかな……チュチュ……う〜ん」
「チュチュピカチュチュピカチュカッ……ピッピカチュウ」
「うん、今噛んで誤魔化したよね。ピカチュカって……あ!」

まさかマリアが噛んだ言葉にヒントを貰うとは。

それにしても、今のピカチュウマリアは可愛らしかった。

「チュカ、なんて良いんじゃないかな?」
「チュカ……」

心の中で、何度もチュカ、チュカ、チュカチュカチュカチュカチュカチュカチュカチュカチュカチュカチュカチュカチュカチュカチュカと復唱する。

……復唱し過ぎである。

大袈裟な位、チュカという単語を復唱すれば、しっくりきたのか、コクンと頷いた。

「じゃあ決まりですわね、ニコラス・チュカ」
「お願いだからニコラスから離れて」


わたあめのような
(ふわふわとした)
(きもちが溢れた)


20140126
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