「相変わらず……乱暴ですね、監督は。オカマの癖に……」
「違うわよんっ! ワタシはニューハーフ!」
「何が違うんですか……」

ぷんぷんっ、とあざとく怒りの表情を見せる監督は、とんだ道化師(ピエロ)だ。

流石、自分の監督(コーチ)なだけはある。

ははっ、と笑うと監督の顔がまた厳しく、しかし優しい物となっていた。

「……頭は、冷えたかしら?」
「ええ、嫌という位に」

少し肩を上げ、眉を下げて笑った。

驚く程に一気に頭は冷え、先程まで頭に血が昇っていたのが嘘のようだ。

だから、今まで回らなかった思考が、回る。

今なら、いつものようにルビーの事を理解出来る。今、何を考えているのか。

  だって、兄弟だから。

理解しようとしなかったのは、自分も同じだった。結局はすれ違っていた。

でも、





「大丈夫です。答えなんて、最初から出てたんです。
 ……ルビーもすぐに気付きます」





もう、大丈夫。

お互いすれ違ったりなんてしないし、ルビーも自分も、戦いから背を向ける事なんてしない。

「よし、みんな出てきてくれ!!」

ホエルオーの上に、自分のポケモン達を出した。

「町の人々を救出するんだ!」

その言葉に、ポケモン達は各々(オノオノ)の反応で素直に了解した。

ブースターはホエルオーの上にあげられた人達を、トドクラーに乗せて安全な場所へと運んでいった。

アゲハントとチルットは、上空から見下ろし、物陰に隠れる形で水に浮いている人々を見つけ出し、ホエルオーの上に乗せた。

ピカチュウはアブソルに乗り、洪水が起きた事によって流れ着いたサメハダーなどの凶悪なポケモンを倒していた。

「じゃあ僕は声かけを  
「いやんっ、もうっ、完全に吹っ切れちゃってっ! 格好良いわぁっ!! 流石はワタシの弟・子!」
「監督……」

本当に相変わらず、空気を読めるのか読めないのか分からない人だった。

さっきのシリアスは一体なんだったんだ、という感じだ。

だが、それが逆に自分を安心させ、落ち着かせる物だった。

これだから、自分はこの人の弟子を辞められないのだと改めて思う。

「(……よし)
 小さな子供やお歳を召した方を優先的に、こちらへ!!」

まだまだ不甲斐ない自分だけれど、監督の思いに答えられるような自分に、変わりたい  


弱い、しかし確かな光
(それを便りに)
(突き進むんだ)


20140228



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