「キミは!!」「あんたは!!」

エアカーの真下には、サファイアがこちらを指差していた。

まさかこんな所で会うとは思わなかった。

車は地へと離陸し、サファイアと側にいる女性  センリを迎えに来たナギという人だ  と同じ高さとなる。

「キミたちは…」
「知り合いなのかい?」

ミクリとナギに聞かれれば、サファイアは元気良く笑って、ルビーの背中を思いっきり叩いた。

「知り合いも知り合い!! こん人はあたしの競争相手やけんね!!」

『競争…相手?』二人の声がハモり、その疑問が解消されない内に、今度はユキに抱き着くサファイア。

「それで、こん人があたしの友達やけんね!!」
「サ、サファイア……」

友達、と言われて、ジ〜ンと来たユキは、サファイアを抱き締め返した。

しかしユキの方が一回り小さいからか、サファイアの腕に収まっているという感じだ。

ルビーは、サファイアが妹に馴れ馴れしく抱き着いて、しかも珍しく妹もサファイアになついたように抱き締め返す物だから、イラッと来て二人を引き剥がした。

「おい! なんでキミがこんな所にいるんだよ!!」
「あたしはジム制覇の旅ばしとうよ! このヒマワキにも挑戦しにきて当然とでしょ?」

引き剥がされて、残念そうにしながら、ふふんという感じに笑う。

「それより、あんたこそなんの用ね? ジムリーダー全集合してるこの場所に」
!! ジムリーダー全集合!?

ルビーとユキが思わず変な顔になりながら、驚いてしまう。

ルビーに至っては、エアカーの影に隠れてしまった。

一瞬、なんで隠れるのかと目をぱちくりさせたが、ああ、コンテスト全制覇するまで会えないもんなぁ、と納得する。

もしかしたら、まだどこかでセンリを拒絶する心があるのかも知れないが。

そんな事を思いながら、向こうからやってくるジムリーダーを見てみるが、父の姿は無かった。

ルビーも、エアカーの影から息を吐いた。

ジムリーダー全集合の場、という事は  

「ようこそ! 待っていた、ルネジムリーダーミクリ!」

やはりか……。ユキとしては、この男がジムリーダーというだけで、より一層近寄り難い気持ちを抱いた。

「依然緊急レベル7の事態は継続中だ。諸君はこのままヒマワキに残り、有事にそなえてもらいたい。
 未着のフウとランが着きしだい、もう一度対策を練る。すべての状況報告はこのナギまで頼む。
 以上!」

なんの話だろうか。

ジムリーダー達はナギの言葉を聞いて、各々散って行った。

ナギもサファイアの元へ行き、ミクリもルビーとユキの元へ行き、散り散りになる。

「いや〜〜、師匠がジムリーダーだったなんて驚きました」
「ジムリーダーもコンテストにしゃしゃり出るんですね」
「フフフ、You達だってジムリーダーの子供だそうじゃないか」

ミクリはユキの渾身の皮肉を無視して、二人の事も見ずに、そう言った。

ユキは皮肉を無視された事に腹をたてたが、ルビーの方はミクリの言葉に苦い顔になる。

「き、聞いてたんですか? 師匠〜〜」

しかしすぐに拳を作り、師匠であるミクリに対して意気込みを見せた。

「でも関係ないです、師匠! とにかくボクはコンテスト一筋ですから!!」

そんな弟子の言葉はどこ吹く風。

ミクリは依然として二人には目も呉れずに、どこかを見ている。

それどころか、急にアズマオウを出して、空に向かって水を放たせた。

「おお〜〜!! 美しい! 流石師匠!! さっそくコンテストの特訓ですか!!
 よ〜し! 来るべきハイパーランク、マスターランク出場にそなえて、ボクも師匠の技、モノにするぞ!!」

約一名、とんだ勘違いをしている奴がいる。

絶対違う違う、と手を横に振るが、コンテストまっしぐらなルビーが気付くはずも無く。

ミクリがやった動作を実際にやってみたりして、それをメモしている。

だが、実際は、コンテストの特訓などでは無く、何かを調べているようだった。

何にしても、行動が怪しい事には変わりは無い。

「ちょっと移動してくる。危険だからYou達はここにいたまえ」
「ええ!?
 ちょっと待って〜! 師匠〜〜!!」

エアカーが宙に浮き、ルビーの制止の言葉等聞かずに、ミクリはどこかへと行ってしまった。

ユキは嬉しそうに胸を撫で下ろしていたが、ルビーは師匠が行ってしまった空を眺めていた。

「……」

道を一本隔てた場所では、サファイアがナギにコーチをして貰った後に、同じくナギにどこかへと行かれてしまっていた。

サファイアは先生がチルタリスで飛んでいってしまった空を眺めていた。

「……」



………。



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