「う〜ん。あ、じゃあこうしよう」 ユキはケムッソを抱き上げた。そして自分が歩みを進める。 うん、この方が断然速い。 「向かう方向は?」 小さな足達で差し示す。いや、どこだよ。 「……sorry。私の聞き方が悪かったみたいだ。真っ直ぐかい?」 コクリ、とゆったり頷かれる。 よしよし。これなら分かる。 「さっきミシロから出た時とは訳が違うからな、慎重に行かなきゃな!」 ここは道なき道、という感じの大自然で、迷ってしまったら終わりだ。 (じゃあ、走らなきゃな。結構時間を費やしてしまった) タッ、と地を蹴った時、足元から「カチ」という音がした。 「な、なんだ!?」 突然足元 自分では制御が出来ない。 「うわったったった!」 風を切り、凄いスピードで半強制的に駆けていく。 「なんなんだよこの靴ぅ!!!!」 そう言えばさっきの電話していたおじさんの話によると、デボン社製の加速機能付きランニングシューズと言っていた。 いや、加速し過ぎだろ。 そんな事を思いながら、ぐんぐん風景は目眩(メクルメ)く変わっていく。 「わわわわわあ!!!! 助けてくれェ!!!!」 確かにどんどん次の町には迫っているのだが、これでは怪我をしてしまう。 その時 くんっ、と引かれる自分の体。 前の方からすっ転ぶ、が、痛くない。それどころか反動すら無い。 見てみると、自分の体がネット状になった糸で守られていた。 「amazing……! 誰がこんな事……」 振り返ってみると、そこにはケムッソとイーブイが自分を心配そうに見つめていた。 「I see(成る程)。リージュの糸を吐く≠ゥァ……でも、どうしてこんなに速く追い付いたんだい?」 そういうと、イーブイが自分の周りで加速してみせる。 「フラッフィの電光石火=c…確かに追い付けるね、それなら」 相変わらず頭の回転が速い幼馴染みだな、とイーブイの頭を撫でる。 すると、ぴこぴこと耳を動かし、ブンブンと犬のように尻尾を振った。 「可愛い奴だなァ!!」 思わず、がばちょっ、と抱き締めた。 可愛すぎて英語も出なかった。 すると、ある一つの視線を感じる。 「リージュ?」 ケムッソは自分も誉めて誉めてとばかりに体をパタパタさせていた。 「リージュもvery prettyだから安心してくれ!!」 ぎゅむっ、と抱き締める。 ちょっとチクチクして痛かったが……まぁ、愛でるのにそれは関係無い。 「あれ……リージュ、体が……」 ケムッソは見たことも無い光に包まれた。 そしてメキメキと姿を変えると 「!! こ、これはトランセルやコクーンみたいな状態なんだよね?」 こうやっていきなり体形を変えられると、少し焦ってしまう。 元々ユキがゲットした時、ケムッソはレベルが6であった。 だが、力を使った為に7レベルに上がったのだ。 すると7レベルになるとカラサリスというポケモンになるケムッソは、今に至る訳だ。 「私、進化するの初めて見たよ……こんな感じなんだなぁ」 初めてというのはやはり新鮮な気持ちになり、ちょっと興奮してしまう物だ。 まじまじとカラサリスを見詰めた。 「へェ、特性が脱皮≠ノなったのかァ! 後、固くなる≠覚えたんだねェ!」 カラサリスは嬉しそうにニコニコ笑った。 やはりカラサリス自身も、初めての進化が嬉しいのだろう。 「よし、じゃあ気持ちを新たにあそこに見える町にgoだ!」 歩みを進めると、イーブイの足音だけがする。 だが、カラサリスの進む音は聞こえず、見てみると、ちょっともどかしそうな顔でじっとしていた。 つまりこれは、あれか。 「キミ、動けなくなったのかい?」 物凄く先が思いやられてしまった瞬間であった。 この大地の上で (80日の競争が) (始まっていた) 20140203 ←|→ [ back ] ×
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