「さすが田舎、というべきなのか」 ずっと走っているのに、全く町が見えない。ずっと、自然の風景が広がっている。 「あれ?」 だが、その内ぽつねんと電話ボックスが見えてくる。 しかも電話ボックスには、一人のおじさんが誰かと電話していた。 関係無い、か。そう思って通り過ぎようとした。 しかし 「キミの名はもしかして…ルビーくん、じゃないかい?」 「 その言葉を聞いて、思わず物陰に隠れる。 今、このおじさんは兄の名前を言ったのか? という事は、兄も、そして自分も知っているのか。 どうして分かったのか、電話越しのルビーも聞いて来たようで、おじさんはその理由を溢した。 「キミのはいていた靴だよ。 デボン社製の加速機能付きランニングシューズ。開発されたばかりの新商品で一般にはまだ売り出されていない」 (ゲェッ、この靴そんな目印になるのか!?) 「ある男が息子と娘の誕生日プレゼント用にどうしても手に入れたいと相談してきたので、私が骨を折ったのさ」 だから、今日机に乗っかっていたのか。一度位しかチャンスは無いだろうから。 先程頭に過ったのは、靴を棄てる事だったが、わざわざ調達したと聞くとどうにも棄てにくい。 「男の名はセンリ。キミのお父さんだろ? そうそう、キミが小さいころ一度会ったこともあるぞ」 正しく父はセンリだ。 しまった、父の知り合いだったのか、と頭を抱えた。 逃げる事も考えたが、一体ルビーはどこでおじさんと電話しているのか、と疑問に思う。 (なんかトラブルに巻き込まれてなければ良いんだけど……) その通りで、今正に山奥で葉っぱを着た女の子に襲われていた。 だが、さすがにそんな事がわかる訳など無く。 (ん〜、どうしようかなァ……) 探しに行くか、迷う。けれど探す当てがある訳でも無い。 『どげんこつか言うてみいよ!!』 (え、受話器から聞こえてきたよ) どれだけ大声で言ったのだろうか。 まぁ、さすがにユキの場所からは微かに聞こえてくる感じだが、おじさんは大声に驚いたように肩を跳ね上げている。 おじさんが誰かいるのか、と聞くと返答が返ってきたのか、寝言のように「女の子…なまり全開…。野獣…」と呟き始めた。 いやいや待てよ、その単語の最後可笑しくないか、繋がらなくないか、とか思うが電話越しの状況なんて分からなかった。 「だったらその女の子は私の娘だ。フィールドワークを手伝わせている私の娘、 サファイアだ」 なぜだかルビーのムンクの叫びが頭に過ったのは、兄弟だからなのか。 しかしその後に電話が切れたのか、おじさんがずっとルビーの名を呼び続けた。 (私はどうしようかなァ……) 突然切れたのなら、事故か、それとも圏外域に入ったかのどちらか。 (……どちらにせよ、ルビーなら大丈夫か) ユキは次の町でルビーを待っていようと、おじさんの目を盗み、先の道へと歩みを進めた。 なぜ駆けるのでは無く、歩みを進めるのかは、相変わらずケムッソがのんびりと進んでいるからだ。 「せめてマップ位は欲しいよなァ〜」 するとケムッソは鳴き声をあげる。 お腹でも空いたんだろうかとケムッソを見ると、なんだかニコニコして体をくれらせる。 さて、何を言いたいか分からないぞ。 よくミ≠謔、とケムッソを穴が開く程に見つめる。 「understand(分かった)! 案内してくれるって言うんだね?」 そう言うとニッコリ笑って頷いてくれる。 きっとここに住んでいたから、この辺の事は把握しているのだろう。 「じゃあ、行こうか!」 † † † ケムッソというポケモンは、芋虫ポケモンという種族である。 まぁ、そんな事はポケモンの事が分かる機械なんて物が無くても分かる訳で。 体長は、約0.3mと言った所か。 つまり何が言いたいかというと。 「………これはいつになったら着くんだい?」 芋虫に着いていくなんて、不可能だという事だった。 さっきからのんびりと進んでいるが、1mも進んでやしない。 先程一緒に行った時は、結局イーブイの上に乗っていたから早く歩けたのだが。 案内、という事はその案内人の後を追うという事で。 ←|→ [ back ] ×
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