トライアングラー | ナノ
  いつもの取り合い
 
それはいつもの風景。いつものやり取り。
ハクアはそれいつものように眺めていた。
困ったように。


「ハクアと帰るのはオレだ!」
「違います! ボクです!」


二人は睨み合いながら微かな殺気を発していた。


「ふ、二人で一緒に帰ろうよ」
『ダメ(です)だ!』
「ええ……」


同時に二人に言いきられ、ハクアは困ったように押し黙った。
そこに一人のプロポーション抜群と美少女が隣に来て、呆れた顔をする。


「またやってんの?」
「ブルー!」
「そんな助けを求める犬みたいな顔しないの。よしよし」
「くぅん……って私、犬じゃないよ!」


美少女ことブルーに撫で撫でされればハクアは気持ち良さそうにしながらノリツッコミ。


「例えよ、例え。ハクアは相変わらず可愛いわねー」
「そ、そんな事無いよ」
「あるからこんな状況なんでしょ」
「それは……」


ちらりと二人を見たら黙るしか無かった。
あの二人が歪み合うのは今日に始まった事じゃない。毎回毎回の事だった。
黒髪の山形の不思議な髪をした少年はレッド。
ハクアの同級生の幼馴染みだ。
スポーツ万能で、後輩からの人望も厚く、人気もある。
金髪でアホ毛の生えた小柄な、ちょっと見るだけなら少女と見紛う程の可愛い顔をした少年はイエロー。
スポーツは得意な方ではないが、美術系の絵などは得意だ。
ハクアの入っている美術部の後輩だ。
人懐っこく、可愛い顔から先輩達に可愛がられている。
先日、そんな二人から、なんとほぼ同時に告白してきた。
そこで知り合った二人は、初対面にも関わらず、その場で喧嘩を始めてしまった。
それから毎日、二人はこうやって争っているという訳だ。


「今までハクアに寄り付く男子はレッドがなぎ倒してきた訳だけど、そんなレッドに負けずにいるイエローって本当に凄いわね……今更だけど」
「え、何の話?」
「あんた知らないの!? まぁ、そうよね。ハクアだもんね」
「それどういう意味!?」
「いいわよ、面倒臭いわ」


ブルーに溜め息を吐かれた少女はハクア。
レッドの幼馴染みでイエローの先輩。
そして事の発端である。
彼女は昔からその性格の良さと顔の良さで絶大な人気を誇っていた。
しかしブルーが言ったように、彼女に言い寄る輩がいたらレッドがことごとく倒してきた。
そんな中、高校3年生になり、イエローという少年が現れた。
いつものように倒すつもりが、なかなかイエローという少年は手強かった。
未だに倒せず、今に至る訳だが。


「またやってるのか……」
「グリーン!」
「そう言いたくなる気持ち、物凄ーく分かるわ」


いつものように呆れたような顔で現れる茶髪でツンツンウニ頭のグリーン。
この高校の生徒会長で、理事長の孫だ。


「ハクア、これはいつ終わるんだ」
「ええ……私に聞かれても……」
「むしろ終わらせたら?」
「どうやって?」
「あんたがどっちかに決めるのに決まってるでしょ」
「ええ!? 無理無理!! 大体決められたらとっくに決めてるよ!!」


「それもそうね」はぁ、と溜め息を吐くブルー。


「中取ってアタシにしたら?」
『ダメ!!』
「冗談よ……そこの地獄耳二人」


ブルーが冗談のつもりで言った言葉にすぐさま反応する二人に、今までで一番大きい溜め息を吐いた。


「やっぱりどっちかに決めなさいな。そろそろ鬱陶しいわ」
「私は二人共好きだもん……」
「どっちかに決められないなら……そうね、昔から言うじゃない。強い奴が勝者、って」
「? つまり?」
「つまり、ポケモンバトルとかスポーツ、色んな種目で競って勝った方がハクアの恋人になる、とか」
『それだ!!』


またもやブルーの言葉に一目散に反応する二人。
いつの間にか間近にいた。


「で、でも、バトルとかスポーツはイエローに不利なんじゃ……」
「ハクア先輩。大丈夫。ボクはハクア先輩と恋人になれるなら本気を出せますから」
「イエロー……」
「バトルでオレに勝てると思ってる時点で負けてるな」
「そうやってボクの実力を軽視してるレッド先輩の方が負けてますが?」


バチバチバチと二人の視線の間に火花が散る。
ハクアはその場でオロオロするしか無かった。


こうして、ハクア争奪戦の火蓋が切って落とされた。 prev / next

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