突然ですが、私とレッドは頭が悪いです。これでもかというほど頭が悪いです。
そんな私達が二人で勉強するなんざ無謀だったんだね、所詮。
「なぁ、なまえ。『因数分解』って、何だ……?」
「因数分解、だと……!? い、いんすうを分解するんだよ!」
「いんすうって何だ?」
「………いん、の数だよ。……多分」
私はモゴモゴと言いよどんでしまう。
し、知らないもん。因数分解なんて!
だいたい、因数ってのを分解する意味がわかんない! 自然のままにしといてよ! 私は常に自然を大切にしてんのよ!
私がそんな事を頭の中で叫んでいると、レッドはショートしたように頭から煙を出した。
「れ、レッド!」
まぁ、そんなこんなで勉強会はお開きにして帰宅する事になったとさ。
ちなみに開始5分後の事だった。
「くそー、グリーンが『お前達は勉強したって頭が良くなるわけ無いな』なんて言うから勉強なんて無駄な事をしたじゃんかー」
レッドさんレッドさん。それはグリーンの言葉を認めた事になるんじゃあ……。
まぁ、私も勉強なんて無駄だと思ってるけどさ。
「私はテストで二桁はとれるから大丈夫!」
「お前はそんなんで将来どうするんだ?」
「いや、テスト一桁なレッドにそっくりそのままお返しします」
「オレはポケモンバトルがあるからな! そうだな、ポケモンマスターにでもなるかな!」
「じゃ、私はポケモンマスターの妻という事で!」
「……え」
私のその言葉に、真っ赤になって固まるレッド。
え、なになに!? なんで赤くなったの!?
「お前はそんな……ストレートに……」
「え、なんか私変な事、言った?」
首をかしげる私に、レッドは肩を落として溜め息を吐いている。
ちょっと。はっきり言いなさいよ。
「もういいや……」
「なんなのー? 言いなさいよ、ほらほら!」
「じゃ、オレに追い付いたら良いぜ! よーい、ドン!」
「あっ、ズルーイ!」
でも私は体育会系だ。だから頭が悪かったり……。
私はレッドの背中を、夕陽が照らす帰り道で必死に追いかけた。
帰り道
(ただの帰り道でも)
(貴方と一緒なら特別)