オレは現在進行形でリア充がイチャイチャする道中を歩いていた。
 ったく、恥ずかしく無いのかね。あんなに手を絡めて、腕を絡めて、唇と唇とでこんにちは──って!
 その意味がわかったオレは赤面してリア充から目を逸らした。情けねー……。
 だいたい聖夜だからってイチャつくリア充共の神経がわからないね。頭沸いてんじゃね?
 いや、この発言は全国のリア充共を敵にまわしちまうから控えるが……。いや、でもだいたい、クリスマスってのはイエス・キリストの降誕を祝う祭であってリア充がイチャイチャする日じゃ無いからな。決して。
 確かにオレ自身がリア充になって、クリスマスをイチャイチャして過ごしたいかと聞かれたら……そりゃ、お前、したいよ。
 まぁ、やっぱりそういう事なんだろうな。

「ただいまー。おかえりー」

 誰もいない小さな家に着き、一人で受け答えするオレはいわゆる負け組だという事だろう。
 くそっ、来年は覚えてろよ!
 そんな誰に言うでも無い言葉を心の中で言ってみる。
 オレの相方であるピカチュウがセルフで出てきて冷蔵庫からジュースを持ってきてくれる。

「な、慰めてくれるのか、相方よ……!」

 涙ぐんだオレに相方は力強くうなずいた。そんな相方の心強い動作に、より涙ぐむオレ。はたから見たらなんじゃこら、という感じだ。
 しかし、オレ達は絆の強さを感じた一瞬だった。

「よし、じゃあ二人で……って言っても一人と一匹だけど、乾杯するか!」

 オレは相方の分の、きのみジュースを小さめのカップに注いだ。

「よーし、かんぱーい!!」

 相方が可愛らしく鳴く。もう、オレには相方だけで良いや! もう、恋人なんていらない! この相方のピカチュウ(注オス)と結婚するぜ!! 別にやけくそになんか……なってないからな!
 オレが知らず知らずの内に危ない方向へと走った時、窓がコンコンと叩かれた。
 ……誰だ?

「だ──」
「メリクリー、リュウ!」
「──れッ!?」

 ガラリと開けた窓から勢い良くなまえが飛び出してくる。
 オレの顔に、なまえの細く柔らかい足が思いきりぶつかる。というか顔を足で蹴られた。

「あー、やっぱり一人(とピカチュウ)で聖夜を過ごしてたかー」
「痛てて……、何しに来たんだよ……?」
「何、って」

 鼻をさすっているオレを、なまえは整った顔でじっと見つめた。……え、何?
 かと思えば、ニヤ〜と顔を崩す。

「リュウをからかいに」
「帰れよ」

 ビシッと突っ込むようにオレは即答した。

「えー? じゃあ哀れみに」
「さほど変わらねーよ」

 今度は手を使って突っ込むオレを、なまえはくすくすと楽しそうに笑った。
 ったく、こういう人をおちょくる事をしなければ十二分に可愛らしいのに……って何考えてんだ、オレ……。

「クリスマスに一人なんて淋しいね〜」
「……あのな、クリスマスが特別なものなんて誰が決めたんだよ。お金が国によって決められていなかったらただの紙なのと同じで、キリストが決めてなきゃクリスマスなんてただの365日の内の一日なんだよ」
「あー、そういうのは屁理屈って言うんだよ?」
「……う」

 オレが自信たっぷりに主張を述べると、依然としてニコニコした顔で、それも上目使いで顔を覗き込んできた。
 後から自分の主張を考え直してみると、ただの淋しい奴の戯れ言だという事に気がついた事もあるが、上目使いのなまえが可愛くて目を逸らしてしまう。

「あっれ〜? 顔赤いよ〜?」

 にゃろ……、わざとやってるなコイツ。
 それでもそんななまえが可愛いと思ってしまうのはなぜなんだろうか。

「あ、そうだ。……はい」
「え!? プ、プレゼント?」

 突然余裕の表情だったなまえが、真っ赤な顔でわたわたし始めた。「まさかリュウからプレゼントなんて……」とか「宝箱に入れて置こう」とかなにやらそんな事をぶつくさと言っている。
 そんなに意外だったか、オレがなまえにプレゼントをやる事が。
 そりゃ、いつもおちょくるなまえだけど。何よりオレみたいなどうしようもない奴に世話を焼いてくれるし、一応感謝してるんだぜ?

「あ、あのね、私リュウへのプレゼント無いの……」
「んー? 別に良いさ」
「──う」

 オレはなまえに向かって微笑んでやると、途端になまえはボンッという音をたてて顔を赤くしてうつむいてしまう。
 な、ど、どうした風邪か!?
 オレがどうしたら良いかわからずに手持ちぶさたになった時、いきなりなまえが勢い良く顔をあげた。

「じ、じゃあ今日は私がリュウの側にいてあげる! 聖夜に一人じゃないなんてこれ以上のプレゼントは無いよ!? うん!」

 真っ赤な顔で、まるで自分を納得させるようにうなずいた。
 凄い勢いで顔を近付けて言ってきた為、オレは有無を言わさずうなずいた。
 するとなまえの顔がパアアァァァ、と明るくなる。うっ、か、可愛い。

「まぁ、確かに一人のクリスマスは嫌だな、って思ってたから嬉しいよ」
「ふふ。だろうと思った!」

 そう言ってなまえは自身の顔を、オレに近付けた。
 ──え、な……!?
 頬に生温い、すごく柔らかくて、ほんとに溶けちゃいそうな位柔らかくて魅力的なものが触れる。
 唖然としたオレに、オレから離れたなまえは悪戯っ子のような顔でにんまり笑った。

「プレゼント! 今夜は最高の聖夜にしてあげるから!!」

 やっぱり今日はリア充がイチャイチャする日だ。


プレゼントをお届けに参りました

title by Fortune Fate

ギャグを目指しましたリュウ夢。
な、なんだこれ……。レッド夢と色々被ってるよ!?
でも楽しかったんだぜ、オレ得なんだぜ。
リュウの口調が、少々不良臭いです。でも私の中のリュウは、どんなに汚い言葉を使っても、印象は真面目。です。書けないだけで。
正直に言いますと、リュウ君に私の言葉を代弁して貰ったのでこんな口調です。←
それではメリークリスマス!追伸リア充爆発しろ★


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