レッドは、優しい

馬鹿と言っても過言ではない程の人の良さに、誰かのために一生懸命になれる正義感。それから、どんな極悪人でもさらりと許してしまう寛容さ

それらをすべて踏まえて、レッドは優しい

………という世間一般の彼の評価に、私は素直に頷けない


「ひどいなー」

「全然傷ついてないでしょ」

のんびりとした口調のレッドにきっぱりとそう言い切る
彼は歯を見せてそのまますりすりと私の首に擦り寄った

「ガーディじゃないんだから」

「んー?」

そうやって窘めても返ってくるのは曖昧な返事
諦めてため息が漏らせばレッドがおかしそうにまた笑った

「俺はなまえにはいつも優しいだろ?」

「基本的にはそうなんだけど…」

さっき述べた内容が全部違うって聞かれたらそういう訳ではない
基本的?なんて私の首元で動く黒髪をくすぐったく思って頭を軽く叩けばわざとらしい悲鳴が聞こえた

「なんか優しいだけじゃない気がするんだよねー…」

前これを友人達に話したが誰ひとりとして同意はしてくれなかった。もしかしたら私だけの感覚かもしれない

うん、と自分を納得させようとひとつ頷く
すると私の首に顔を埋めていたレッドがゆっくりと起き上がった

「俺わかるぜ」

「へ、」

「どうしてなまえが俺のこと優しくないっていうのか」

にんまりと唇に孤を描きながらレッドはそういった
そんなこと言われたら気になるに決まってる
私はレッドに問い掛けた

「どうして?」

「例えばさ、」

瞬間ぐい、と服を引っ張られる

突然のこと状況判断が出来ずに重力に従ったらガツン、と何かが口にぶつかった。多分歯だ、痛い

「っひ、」

今度はじんわりと熱を持つそこにぬるりとした感触
湿ったそれが染みてぴりぴり痛んだ

「っい、」

必死、というかほぼ無理矢理にレッドを突き飛ばす
酸素を死に物狂いで取り込んでいる私とは裏腹に当の本人はきょとんとして唇を尖らせていた

「なんだよ急に」

「っそれはこっちの台詞!あー…唇切れたし…」

血の味がする口の中に舌打ちをして、痛みに顔をしかめる
するとレッドから謎の視線を感じた

「あー、やっぱさ」

「………?」

「俺、好きなんだよな」


なまえのそういう顔

「…………は?」

思わず口から変な声が出た
え、そういう顔ってつまり、

「もしかして…」

「泣きそうな顔とか、嫌がる顔」

にっこりと笑った姿に全身を鳥肌が襲った
とにかく距離をとろうと、さりげなく後退ればガッチリと腕を掴まれた

「な、なまえ」

「な…なあに」

「俺は優しいだろ?」

「はい」

ひしひしと体に伝わる威圧感
光のスピードで頷けば満足そうにレッドが笑った

……やっぱ世間一般の評価って信用できないな、うん


優しくない


「レッドさ、Sなの?」

「え、俺今Lサイズ着てるけど」

「(無自覚…っ!?)」





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