いつもあの子には振り回されてばっかりだから、今日くらいは振り回してみたい……なんてな。





迷子の妖精とワルツ





「ステラちゃーん!」

「……ゼロスくん? どうしたの?」


 呼びかければ案の定、首を傾げてこちらを見つめるステラちゃん。その拍子に、彼女の髪がふわりと揺れた。それを確認すると、俺は声のトーンを落として言葉を吐く。


「俺さまさあ、ステラちゃんのこと嫌いになっちゃったわ」

「え……?」


 言ってみれば眉尻を下げてしょんぼりとするステラちゃん。思った通りの反応で、ちょっと嬉しいけれどさすがに良心が傷んだ。
 ゆるりと潤む双眸を見て、少し躊躇ってから咳払い。頭をがしがし掻けば、赤色がちらちらと舞った。それから、俺の気まずそうな声が響く。


「あー…さっきのな、うそ、なんだけど?」

「……へ?」


 間の抜けたステラちゃんの声に、俺は彼女が今日が何の日かを完全に忘れているということが分かった。


「今日、何の日か…ステラちゃんは覚えてる?」

「エイプリル…フール……」

「……そ」

「じゃあ……?」


 ぱああっと明るくなるステラちゃんの表情。今までの曇り空なんて嘘のような、晴れた笑顔。それにつられて俺も笑みが零れた。


「良かったあ……」


 ほっとしたようにステラちゃんが目を細める。反語的だけど、嫌いって言ったら悲しそうな顔をされるなんて、嬉しいわけで。


「俺さまうれしー」

「どうして?」

「ステラちゃんに好かれてるなーって思って」

「だ、だってそれは…!」


 ゼロスくんが嫌いだなんて言うからだよっ!なんて、少しだけ頬を赤らめながら言い訳をするステラちゃん。

 あー、やっぱり俺さま好かれてるみたい。





(今日くらいは君を振り回したい)
※title by 少年チラリズム様

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