!学パロ+百合要素含みます!
グッバイ、ハロー 未だ蕾のままの桜が生徒たちを送り出す。今日は、卒業式。春というよりはまだ冬と形容できる陽気の中、ステラは校内を歩き回る。
(……今日で、最後)
開放感と、少しばかりの寂寞を抱きながら、生徒がざわつく廊下を進む。浮き足立つ者に、涙ぐむ者。それらを静かに一瞥しながらステラはさらにその先に足を向ける。
それは、ずっと慕い、尊敬してきた師を学生としての最後に一目でも見ておきたいという、小さな願いから発した行動だった。
「あら、ステラ」
「……リフィル先生」
探していた声を耳にして振り返れば、そこにはリフィル――今日までステラの師だった女性が、変わらぬ態度で立っていた。
その姿を目にすると、ステラは悲しくなんてなかったはずなのに、急に涙が溢れそうになる。今日でお別れだと思った途端に。それは、ステラが師としてリフィルを慕っていたと同時に、ひとりの人として好意を抱いていたからだった。
「卒業おめでとう」
「……ありがとうございます」
にこりと微笑みながら祝辞を述べるリフィルに、ステラは俯いたまま礼を言う。このまま顔を上げてしまえば、涙が一緒に溢れてしまいそうで、ステラはリフィルの顔を直視できなかった。
(先生にとって、私なんて)
大勢の生徒のひとりにしか過ぎないのだ、だから笑顔で送りだそうとするのだと思うと、ステラの中に悔しさと似た感情が浮かび上がる。
(私にとっての先生は、好きなひとは…ひとりだけ)
「泣いているのかしら?」
「泣いてなんか、いません」
俯いたまま黙り込むステラに、首を傾げながらリフィルが訊ねる。嗚呼せっかく先生が声をかけてくれているのに、そう勿体ないと思いながらも、ステラには笑って返事をすることができなかった。
(こんなんじゃ、だめ…なのに、)
黙って俯いて、顰めっ面の自分が先生に残ってしまう。笑わなきゃと思うのだが、上手くいかない。ぎこちない頬の筋肉をつり上げてステラは笑おうとする。
(私は、ちゃんと笑えてるかな)
できる限りの笑顔をつくり、ステラは顔を上げた。
「……あの、私、先生にちゃんとお別れ…言いに来たんです」
「……そう」
少し憂いを帯びた表情のリフィルに、ステラは戸惑いながらも言葉を続ける。