!百合要素注意!





てのひら





「ありがとう! リフィル先生って、何でも治せるのね」


 先程の戦闘で怪我を負ったステラはリフィルに呼ばれ、こうして治癒術を受けているのだった。
 不思議そうに見つめてくるステラに、リフィルはくすりと微笑んだ。


「……私だって、何でも治せるわけではないのよ」


 だから次からは怪我しないように気をつけなさい、と術の光の向こう側からリフィルの優しい声音が聞こえた。
 けれど二言目には、そもそもあなたは女の子でしょう?前線で闘うなとは言いません、あなたは強いもの。でも、もう少し安全に気をつけて闘いなさい…と説教が飛んでくる。
 怪我をする度にこうも小言を言われてはたまったものではない。


「あはは…ごめんなさい」

「分かればよろしい」


 困ったように笑うステラに、リフィルはつんとした態度で返し、それからふふ、と笑いを漏らした。
 本当に次からは気をつけて頂戴と念を押すように付け加えられた言葉にステラは、はぁい分かってます、と子供っぽく返事をした。
 暫くしてリフィルが、はい、治療はおしまいよ、とステラの肩をぽんと軽く叩いた。
 それを合図にステラはすくっと立ち上がると、ありがとう先生と謝意を述べ、へらっと緩んだ笑みを浮かべる。ステラは身を翻して部屋の扉に向かったが、その正面ではたりと立ち止まった。


「いつも思うけど」

「何かしら?」


 ステラは言いかけて、くるりと振り返る。リフィルを見つめると、ぱちりと目があった。
 大人の女の魅力、というとあまりに安直ではあるが、そんな形容し難い魅力にステラは少しどきりとした。


「先生の手って、あたたかくて好き」

「ありがとう」


 リフィルは首を傾げて、でもあなたの方が手はあたたかくなくって?と呟いた。ううん、そうじゃないの、とステラが首を振る。


「なんか、ね…先生の手が触れると、ほわんって、あったかくなるの」


 そこで時間が止まったような気がした。リフィルがまじまじとこちらを見つめている。
 何かまずいことでも言ってしまったのかとステラは言葉が続けられなくなる。はた、と自らの発言を客観的に考え直してみる。
 あれ、これって考えようによっては、いや、これは明らかに。


「…っ、何でもないです!」


 だから怪我したって先生が手当てしてくれればへっちゃらだよ、とまくし立てるように言葉を続けると、ステラは慌てて部屋から駈け出て行った。リフィルを残して、ばたばたと足音を響かせて去っていく。
 暫く走るうちに、ステラは自分の顔が火照っているのに気づいた。


(ああ、私、もしかして)

「……好き、なのかも」





(あなたの手、あたたかくて好き)

10/01/22


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