!ED後捏造注意!
※もしアスベルがラムダに侵食されたら、のはなし。





溶けてララバイ





「……くるしいの?」


 ねえアスベル、と呼びかける声は、彼には通じていない気がした。
 大丈夫だから、ラムダにもこの世界を見せてやりたい、と笑っていたアスベルではあったが、このところラムダの侵食が著しかった。
 呻く彼に、何もできない自分が口惜しかった。加えて、シェリアがいてくれれば、と思ってしまう自分にも腹が立ってしょうがなかった。


(私には何もできない、何も……)


 内心で反芻した言葉が自分を抉っていくのが分かった。けれど自分を責めなければ、そうしなければ自分を保っていられないような気がした。


「ぐあ、あ……っ」


 頭を抑えて唸るアスベル。けれどしてやれることなど何もなくて。嗚呼ごめんなさい、と震える声で呟いて彼を抱く。


(……きっとこの体温は、アスベルには届かない)


 そう思うと、悲しみというよりは虚無感に、涙が零れた。落ちた涙はアスベルの袖に零れて染みをつくる。けれどそれはすっと消失する。まるで何事もなかったように。
 次の瞬間、背中に痛みが走る。視界が反転したことから、どうやらアスベルに突き飛ばされたのだろう。
 それから彼の冷えた指が首に添えられる感覚に、自分の身がびくりと跳ねたのが分かった。
 ぎりぎりと締まる喉はこくりと鳴って、生理的な涙が頬を伝う。


(くる、し……)


 でも、アスベルの方がもっと苦しいんだって、気づいたの。
 だって。

 ぽたり、ぽたり。


(その雫が何よりの証拠でしょう?)





(帰ってきてよ、と漏れた声は寂しく部屋に反響した。)

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