ハニージンジャー





 わたしの目の前で優雅に紅茶を嗜むリチャードを見て、ちょっとだけ居たたまれなくなった。
 気軽に殿下に会うことができるような特権階級でもないのに、なぜかわたしはほぼ毎日のようにこうして彼のティータイムに呼ばれている。それがすごく不思議であり居たたまれなさを感じる原因であった。


「今日の紅茶はね、特別に取り寄せてもらったものなんだ」

「はあ……」


 曖昧に頷きつつ、勧められた紅茶に口をつけるとそれは確かに美味しかった。けれど、ここがここでなければもっと楽しめた気がする。だってお城で紅茶なんて緊張して味を楽しむ余裕なんて、あんまりないもの。


「緊張してるのかい?」


 そんなことを言ってにこりと笑うリチャード。いつもみたいにしてくれればいいよ、なんて彼は言うけれど、さすがにわたしの住む世界とちがう気がして緊張せずにはいられない。


「……リチャードは、」

「なんだい?」

「どうしてわたしなんかをここに呼ぶの?」


 わざわざわたしを呼んでティータイムを楽しむより、もっと綺麗で身分相応のご令嬢と一緒の方がいいんじゃない? なんて口にしてみると、リチャードはなぜか少し悲しそうな表情になった。


「迷惑、だったかな?」

「……そうじゃなくて」


 純粋にどうしてわたしがこの場に呼ばれるのかを知りたかっただけ。眉尻を下げるリチャードになんだかわたしも悲しくなってきそう。そんな顔をさせるつもりじゃ、なかったの。


「僕がプリムラをここに呼ぶ理由なんて、君と一緒にいたいからじゃないか」

「……へ?」


 思わず零れた素っ頓狂な声。まさかリチャードからそんな言葉が吐かれるなんて意外。……って、そうじゃなくて!


「わたしと、いたい?」

「プリムラって、想像以上に鈍いみたいだね」


 それってどういう意味? 訊ねようとするよりも早く、彼が言った言葉。


「君が好きだからだよ」


 にこりと笑うリチャードに不覚にもどきどきしちゃったなんて、そんな。





(だってそんな言葉、反則よ)

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