3-1
どうしてこんなことになったのだろう?
私は何もできない。
だから全部、なくしてしまうの。
03.そして始まりの終わり
その日の夜。バロニア大聖堂前にプリムラはいた。
「おーい、プリムラー!」
向こうから駆けてくるのはアスベルとソフィ。後ろからシェリアとヒューバートが歩いてこちらに向かっている。
「遅くなってごめん、親父に怪しまれないように出てくるのに時間がかかっちゃって…」
赤茶色の髪を掻いて弁解するアスベルに、プリムラは「私も今来たばかりだから」と微笑む。
そうしている間に、シェリアとヒューバートもアスベルに追いついた。
「…あの、はじめまして、ヒューバートくん。私はプリムラっていうの」
そういえば自己紹介というものをしていなかった、とプリムラは思い出す。よろしくね、と手を差し出すと、ヒューバートはおずおずと彼女の手を取った。それがとても嬉しくて、プリムラはにこりと微笑む。
「プリムラ、嬉しそう」
「うん、嬉しいわ…すごく」
ソフィはプリムラの表情を興味津々に覗き込む。それに尚も笑みを深めてプリムラは答える。
それからは、みんなでラントについてやリチャードが滞在していたときの話をして会話に花を咲かせた。
リチャードがラント滞在を楽しめたことを知って、プリムラは心から喜んだ。結果こうして新しい友達に出会えたことも、とても嬉しく思う。
「それにしても遅いなぁ…」
暫くして、アスベルが腕を組ながら呟く。確かに遅い。普段リチャードがここへ来る時間はとうに過ぎている、とプリムラも訝しむ。
「忘れちゃったとか? もしくは急に来られなくなったとか?」
シェリアも首を傾げる。その可能性もないわけではないが、リチャードの性格からいって、それはないように思えた。そんなプリムラの考えを代弁するように、アスベルがリチャードはそんなやつじゃない、と地団駄を踏む。
「…そうだ! おれたちでリチャードに会いに行こう!」
突然の提案に、シェリアたちは驚く。どうやって、と訪ねると、アスベルは隠し通路を使えばいい、と笑う。
「でも、兄さん…帰ろうよ」
「明日も早いのよ?」
躊躇うヒューバートとシェリアに「大丈夫、大丈夫」と笑って説得するアスベルに、ふたりも困惑しながら頷く。
「そうと決まれば…プリムラ、リチャードがどこから来てるか知ってるか?」
「大体は分かるわ…でも、行き違いにならないかしら?」
心配そうに訊ねるプリムラ。アスベルは「途中で会うかもな」と頭の後ろで腕を組んで答える。幾何かの不安にも似た気持ちを抱きながら、プリムラは大聖堂への入り口を示す。