2-2


「どうしてアスベルがこんなところにいるの? それにあなたは?」

「ソフィの身元を調べに…あと、騎士学校の見学…それから、リチャードに会いたいし!」


 アスベルがわたわたと弁解しようとしている横で、シェリアと呼ばれた女の子はまじまじとプリムラを見つめた。


「あ、あの…」

「あなた、名前は?」

「…プリムラ、です」


 気圧されたようにプリムラは後退する。一通りじろりとした視線を寄越した彼女は、くるりと身を翻してアスベルの方を見る。


「リチャードは王子様よ?そんな簡単に会えるわけないじゃない」


 確かにその通りだと少女も思った。加えて父上の体調がよくないとすれば、会うことは難しいんじゃないか、と。そんなことを考えている最中に、アスベルがポケットからひとつの指輪を取り出す。
 それからにやりと笑ってアスベルは告げる。


「これはリチャードとの友情の誓いなんだ。…こいつの凄さを見せてやる!」

「じゃあ、お城まで案内するわ」


 意気込むアスベルに思わず笑みが浮かぶ。そんな彼らに、プリムラはお城まで案内すると申し出ることにした。
 城に着くと、アスベルは先程の指輪を取り出して、衛兵に話しかける。二言三言交わした後に、アスベルがこちらを振り返って笑う。手でつくられたオーケーから、どうやらリチャードとは会えるらしい。


「大輝石のある広場で待ってろってさ…どこにあるか分かるか、プリムラ?」

「…うん。すぐそこにあるの」


 プリムラはにこりと微笑むと大輝石のある広場の方角を指差した。





     * * *





「わぁ! すっげーな、これ! ラントの風車より大きいな!」


 大輝石を見て、アスベルは開口一番に感嘆の声を漏らした。プリムラも初めてこの大輝石を見たときは、アスベルのように瞳を輝かせていたような気がする。そんなことを思い出して、彼女は笑みを零した。


「…プリムラ、嬉しい?」


 ソフィが紫苑色の髪をゆらりと揺らして首を傾げる。同色の瞳がプリムラを見つめている。
 とても不思議な瞳。深くて、何でも見通すような瞳に思わず見とれてしまいそう、と彼女は思った。
 プリムラ、嬉しいときの顔してる、と言いながら不思議そうな顔をしているソフィに気づいて彼女は「懐かしくて、嬉しいのかもね」と微笑んだ。


「私たちが普段見ている輝石とはまるで違うのね…名前はなんて言ったかしら? グロ…なんとか…」


 シェリアも大輝石を見つめて呟く。名称を思いだそうと記憶を辿っているようだけれど、なかなか答えには辿り着かないみたいだった。


「…グローアンディ。緑なすもの、という意味だよ」


[prev] [next]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -