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10.ホームセレナーデ





「今夜あたりに、異界の扉が開くんじゃないか?」

「おっかねえ…黄泉の国シルヴァラントに飛ばされちまう」


 レザレノ・カンパニー本社を後にしようとしていたロイドたちの耳に留まったのは、そんな噂話。けれど、リフィルの態度がおかしくなったのは、確か異界の扉の話を聞いてからではなかったか。


「ロイド、今のはなし……」


 ステラの呼びかけに、言うまでもないといった表情を浮かべて、ロイドが頷く。噂話に花を咲かせる二人に声をかけると、案の定怪訝そうな顔つきでロイドたちを見つめた。今の話を教えてほしい、と訊ねると二人の男は殊更怪訝そうに視線を寄越してくる。


「あの…ボクたち、異界の扉を見に行きたいんです」


 だから場所を教えてくれませんか、とミトスが続けると、男は先程の話について幾らかの情報を教えてくれた。


「異界の扉は、ここから海を越えた東の方にあるんだ。ごつごつした岩があるから、すぐ分かると思う」

「ありがとうございます」


 コレットとステラはにこり、と笑って軽く会釈する。礼を延べると、男たちは異界の扉が、満月…つまるところ今日は、黄泉の国とされるシルヴァラントに繋がっているから気をつけるように、と念を押して去っていった。


(……異界の、扉…)


 ステラはロイドたちと共に過ごしてから、それなりの時間を経たとはいえ、まだまだそれも短いのだろう。なぜ、リフィルが異界の扉に拘ったのかも全然分からない。しかしこの疑問に関しては、ずっと一緒に過ごしてきたのだろうロイドたちでさえ解せないようであった。


「とにかく、異界の扉ってとこに行ってみようぜ〜?」

「そうだね、私もそれがいいと思う」


 頭の後ろで腕を組みながらゼロスが言う。そちらをアクアマリンの瞳で見つめると、ステラは微笑を浮かべて頷いた。


「姉さん……ボクにも何も言わないでいなくなっちゃうなんて……」


 俯きがちにジーニアスが呟く。落ち込んでいるジーニアスの肩をぽん、と軽く叩いてロイドはその視界の中でにこり、と笑ってみせた。


「先生はきっと、その遺跡がどうしても見たかったんだよ。……だけど、帰ってきたら勝手な行動すんなって言ってやらなきゃな」

「そうだよ、ジーニアス。先生がいなくて……私も悲しい。でもたぶん、先生にも何か理由があるんじゃないかって、私は思うの」

(これが……かなしい?)


 ジーニアスを励ますために出てきた言葉だったが、悲しい、という言葉が出てきたことに、ステラは驚いた。かなしい、これが。不思議な実感に、少女は自分の胸に手を添えた。


「とにかく、異界の扉に急ごう」


 リーガルと合流した後、ロイドたちは先程の噂話をもとに、異界の扉へと向かうことにした。


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