6-1


 雪の降り続く街。
 その街の名は、フラノール。





06.ホワイトノイズ





 土の精霊ノームとの契約を無事に果たしたロイドたちは、続く氷の精霊セルシウスと契約を交わすべく、最寄りの街であるフラノールにやって来ていた。


「それにしてもすごい雪だねえ」


 辺りを見渡したしいなが歓声をあげる。
 レネゲードのベース近辺も積雪の多い地域ではあったが、ロイドたちがいた頃には大して雪が降っているということはなく、精々粉雪程度だった。
 ここフラノールに来て初めて、ロイドたちは吹雪というものを目にしたのだ。


「すっげえ雪だな! イセリアなんて全然降らないもんな!」


 ロイドは目を爛漫に光らせてコレットにその感動を伝えていた。「そうだねえ」とコレットの笑う声が吹雪く音の間に聞こえた。


「すごい雪だね…ゼロスく、」


 ステラは隣を歩くゼロスに声をかけようとして躊躇する。というよりも、見上げたゼロスの複雑な表情に言葉を失った、という方が近い。
 少しばかり悲しそうで、でも何か考え事をしていて心ここに在らずといった表情。


「……ゼロスくん?」


 ゆっくりとその名前を反芻するとゼロスは、はっとした様子で少女を見る。
 アクアマリンの双眸はしっかりとこちらを捉えていて離さない。雪が飴色の髪を攫って流れていくのを、ゼロスはまじまじと見つめた。


「どうしたのよ、ステラちゃん?」

「大丈夫? なんだかぼーっとしてたみたいだから…」


 心配そうな顔つきで尋ねるステラに、ゼロスは目を細めて笑う。それから、すぐいつものくだけた様子に戻る。


「ステラちゃん、俺さまのこと心配してくれるのー?」


 「ありがとー」という言葉とともに、いつもと同じゼロスの抱擁。そのあたたかさがいつにも増して優しく感じたのは、この気温のせいなのか、それとも。
 いずれにせよ少女はそのあたたかさを享受することにする。
 ステラは、ゼロスにこくんと頷くとふわりと微笑みを浮かべた。


「やっさしーい!」

「わ…ゼロスくん、重い…」


 さらにのしかかるゼロスの重さに耐えきれず、ステラはよろけそうになる。


「雪の上でそんなことしてたら危ないよ」


 後ろから呆れ口調でしいなが言う。
 ちぇ、と冗談混じりの舌打ちをするとゼロスはステラを解放した。


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