5-1
空を翔るレアバードは宙に漂う飛竜の巣へと舞い降りる。
そこには、捕らわれた神子。
少女はひとり、祈るような体勢で檻のなかに閉じ込められていた。
「コレット!」
叫んだ青年はその巣に足をつけた。
05.エスケープゴート「大丈夫?」
先陣をきって着地したロイドに続いて降り立ったステラが捕らわれたコレットの檻に近づいて問う。
けれどコレットの表情は、安堵というには程遠く寧ろ焦燥、絶望といったものに近かった。
「ど、どうしたの…具合、悪い?」
「違うの、来ちゃだめ!」
首をひねるステラに慌てて何かを伝えようとするコレット。その違和感にいち早く察したリフィルが周りに注意を促す。
ヴン、と鈍い音とともにコレットの檻のそばにロディルが現れる。
間近にいたステラが驚いて思わず長銃を振り下ろしたが、それはすり抜けてしまう。恐らくこれは、ただの幻。
「そんな出来損ないの神子などくれてやるわい。道理でユグドラシル様が捨て置く訳じゃ」
ふぉふぉふぉ、と嫌な笑い声を発しながらロディルの幻影が言葉を並べた。
「……出来損ないだと?」
ロディルの映像は、怪訝な表情を浮かべるロイドを一瞥して言葉を続ける。
「その罪深い神子では我が魔導砲の肥やしにもならんわい。…世界も救えぬ、マーテル様とも同化せぬ。挙げ句こうして仲間を危機に陥れる。まさに神子は、愚かなる罪人ですな」
再びロディルは嫌な笑いを響かせた。
ステラは、その声に怯えるように身を縮めて耳を塞ぐコレットを見つめた。
(許せない)
「コレットさんに、ありもしない罪を擦り付けないで!」
憤るステラの代わりに怒りを露わにしたプレセアが斧を振りかざす。やはり幻には当たるはずもなく、斧は虚しく空を切った。
「……罪を背負うのは私だけでいい。私と、愚かな貴様こそが罪そのものだ」
鋭く眼を光らせたリーガルがロディルを睨む。手枷の鎖が重い音を鳴らす。
「わしが愚かだと? …笑わせるでない、この劣悪種! わしの可愛い子供たちよ、こいつらを食い散らすのだ!」
リーガルの言葉に怒りを露わにしたロディルが手をすっ、と上げる。それを見るなり、コレットの瞳が見開かれ、彼女の叫び声が響いた。
「みんな! 逃げて…っ!」