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03.クレセントナイト





「あの、私もついて行きたいんです……だめでしょうか?」


 要の紋で正気に戻ったプレセアは、父の埋葬を行った後、ロイドたちと同行することを申し出た。その瞳の奥には、強い意志が見てとれる。
 コレットさんが攫われたのは私のせいだから、とプレセアは付け加えた。


「ならば、私も連れて行ってはくれないだろうか?」


 ヴァーリとの因縁を断ち切るのだと、そう述べるリーガルのなかに、ステラは強い意志を感じた。
 そんなふたりの申し出に、ロイドは笑ってもちろんだ、と応えた。


「神子は連れ去られたか」


 後方から声が響く。ロイドたちは慌てて振り返り、声の主へと目をやった。


「っ、クラトス!」

「……!」


 声を張り上げるロイドを余所に、クラトスは何か別のものを見て、怯んだような素振りを見せた。だがそれも一瞬のことで、恐らく誰も気づかなかっただろう。


「コレットをどこへやった?」

「……ロディルは勝手に動いていて、私の預かり知るところではない」

(あ、れ…? 私、このひと…知ってる?)


 ふとした瞬間、ステラの脳裏にそんな考えが過ぎった。
 見たこともない鳶色の髪をした男のひと。知らない、でも、知っているような…。


「……っ、う」


 急に気分が悪くなってステラはその場に座り込んでしまう。大丈夫かい、としいなが少女の背中をさする。
 クラトスはその様子の一部始終を眺めた後、身を翻した。


「……ロイド、レアバードを求めろ。ミズホの者がそろそろ在処を見つけだす頃だろう」

「おい、待て…っ!」


 ロイドは追いかけようとするも、その腕を引いた。身の回りの警戒をしろ、と一言だけ残してクラトスは去っていった。


「何なんだ、あいつ…?」


 それよりステラが、とロイドは先程しゃがみ込んだ少女のことを思い出して、彼女のもとに駆け寄った。


「大丈夫か?」

「…うん、ちょっと、何か」


 思い出しそうに、なっただけ、とステラは切れ切れになった言葉をなんとか紡いで、にこりと、恐らく無理に、笑ってみせる。
 何でまたこんなタイミングで、とリフィルが顎に手を当てて考え込んだ。


「私は、大丈夫だから…とにかくミズホに向かいましょ?」


 少しだけ顔に血の気が戻ったステラが提案する。


「でもあなた、顔色が…」

「だいじょーぶですよ、先生?」


 心配するリフィルに、ステラはへらりと笑って返す。この子はもう、と溜め息を吐いた後、分かりました、とリフィルが頷く。


「それでいいかしら、ロイド?」

「ああ…もちろんだ」


 頷くロイドに、コレットが心配だもんね、なんてステラが笑って立ち上がった。


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