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「でも、これからどうするんですか?」
雑談に花が咲きそうなときに、話題を投げたのはミトス。その疑問に答えたのはロイド。せっかくシルヴァラントに戻ってきたので、ディアイアンの動向を探ろうと提案した。
「ミトスはどうするの? 巻き込むわけにはいかないよ」
「パルマコスタの総督府に預けたらどうかな?」
コレットの提案に、ロイドが頷く。ジーニアスの言うとおり、ここまで連れてきてしまったものの、ミトスをこれ以上の戦闘に巻き込むわけにはいかなかった。
ミトスは一緒に闘いたいと言ったものの、エクスフィアを装備してても危険だからとセイジ姉弟に宥められ、渋々パルマコスタに身を置くことを承諾したのだった。
パルマコスタに向かう途中、ミトスはステラに向かって話しかけた。
「…ステラはいいね」
「どうして?」
「みんなと一緒に旅ができて」
「…うん、ごめん、なさい……」
ミトスの言わんとしていることを何となく察して、ステラは謝った。きっとあのとき自分が一緒に行きたいと思った気持ちを、ミトスも抱いていて、それが折られたのだから。自分がそうだったらどうしよう、とステラは思うのだった。
その謝罪に、ミトスは首を振ると穏やかな笑みを浮かべた。
「いいんだ、ステラ。君はロイドたちと旅をするべきだ」
「…?」
まるで義務のような一言に、ステラは疑問符を浮かべると、それに気づいたミトスは「気にしないで」とだけ付け加えて、ジーニアスのもとへ走っていった。
* * *
パルマコスタは、衰退世界とよばれる世界にしては栄えている街だった。ロイドたちはこの街を知っているようで、すいすいと歩いて行く。その間もステラは目を輝かせて街並みを眺めていた。
しばらく歩くと広場に突き当たり、広場に面した総督府に入っていった。中に入ると、ニールという男性が快くロイドたちを迎え入れてくれた。
「神子さま、ロイドさん! 封印開放の旅は順調ですか?」
その質問に言葉を濁すコレットの代わりに、ロイドは「順調です!」と笑ってみせる。それから早速ミトスを預かってもらえないかを頼んだ。少し不思議そうな顔をしつつもニールがミトスを預かってくれることになった。
そこでニールはパルマコスタ牧場の話を出した。最近ディザイアンらしき人がうろついていたり、イズールドとの海路で襲撃がある、といったことだった。どうしようか悩むロイドやリフィルだったが、ゼロスの「気になるなら調べたらいいんじゃないの〜?」という言葉に促され、次の目的地をパルマコスタ牧場に定めた。
「ジーニアス、気をつけて。ロイド、リフィルさん、それから…ステラ、みなさんも」
少し寂しそうに送り出すミトスに、ロイドたちは頷いた。それから何かを思いついたように、ジーニアスを呼んだ。首を傾げるジーニアスに、ミトスは手を差し出した。
「よかったら、これ、もっていって」
「これは?」
「ボクの…亡くなった姉さまの形見」
その言葉を聞くやいなやジーニアスはびっくりして「そんな大事なもの!」と声をあげた。
「危険になったら、これを吹いて。何ができるかわからないけど」
そう言って静かに微笑んだ。それから「もしかしたら、助けられるかもしれないから」と続けた。
「わかったよ…ありがとう」
ジーニアスはミトスの差し出したもの――笛を受け取ると、帰ってきたらちゃんと返すから、と言った。
ロイドたちはひとまずミトスと別れ、レアバードに乗ると、パルマコスタ牧場に針路を向けた。