9-2
「あの…ボクも連れて行ってくれませんか?」
声の主はミトス。金色の髪が朝日を反射してきらきらと光る。ロイドたちは一斉に彼の方を向いた。僅かに伏せた瞳が、ステラにはとても綺麗に見えた。
「でも…危ないよ?」
「…分かってます。でも、リフィルさんはボクにとって初めてのハーフエルフの仲間なんです」
安全を考えればミトスを連れて行くわけにはいかないだろう。そう思ってステラはミトスを宥めようとするが、彼は瞳をきっ、とこちらに向けて自分の意志を伝える。その姿を、自分は知っていた。
(一緒に、いきたい…私も同じだった。私も、みんなと……仲間、だから?)
その瞳に何も返せずにステラは立ち尽くす。ゆっくりとロイドにアクアマリンの双眸を向けると、彼は笑っている。どうして、と思うよりも早く辺りに響いたのは彼の声。
「よし、ついてこい」
「…あ、ありがとうございます、ロイドさん!」
にこりと破顔するロイドに、ミトスは一瞬だけ怯んだがすぐに笑顔になる。ミトスはぺこりと一礼すると嬉しそうにジーニアスと手を握り締めた。それを見ると尚も嬉しそうにロイドは笑みを深めると、ジーニアスに声をかける。
「ジーニアス、お前のレアバードの後ろに乗せてやれよ」
「うん!」
銀色の髪を風に踊らせながらジーニアスは嬉しそうに頷いた。それから、ロイドは「"さん"付けなんてしなくていいから。俺とジーニアスは友達だ、だからミトスとも友達だ」と続ける。目を細めて嬉しそうに笑うミトスに、ステラも妙に嬉しさを覚えた。
(うれしい……どうして?)
「ああ、そうだ…発つ前に」
アルテスタの声にロイドが振り返って歩み寄る。きらり、と光るものがアルテスタから手渡されると、ロイドはそれを見つめて目を見開いた。
「これは…?」
「要の紋じゃ。有り合わせのものよりはいいじゃろう…プレセアに、着けてやってくれ」
それだけ伝えると、アルテスタはすたすたと自宅へと戻っていってしまう。その背中を、ロイドは呆然と見つめていた。
* * *
南の楽園アルタミラ。ロイドたちがそこに到着したのは太陽もまだ真上で輝く盛りの刻限である。
「…私はここで待たせてもらう」
「どうしたんですか?」
アルタミラの入り口を示すアーチの手前でぴたりと立ち止まるリーガルに、ロイドは首を傾げる。きょとんとした表情でリーガルを見つめながらステラは飴色の髪を疑問に揺らした。
「まぁいいじゃねーの、俺さまたちだけでリフィルさまを探せば」
「そうしてくれると助かる」
「……?」
頭の後ろで腕を組みながらゼロスが提案する。無理に連れていく必要もない、という判断なのだろうが、ロイドたちはどうも釈然としない。頭に疑問符を浮かべたままではあるが、リフィルが心配なこともまた事実。
とりあえずはリーガルを残して、ロイドたちはアルタミラ内を捜索することにした。