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09.ランドスケープエレジー「そっちにもいなかったかい?」
「うん…家の周りにもいないみたい」
息を切らせて駆け寄るしいなにステラは首を振る。ステラもまた、辺りを探しに走り回っていたために、呼吸が乱れている。跳ね上がった心拍を落ち着けようと深呼吸をしてみるも、効果はあまり見られなかった。嫌な予感に冷や汗が皮膚を伝う。
この騒ぎに気づいたのか、リーガルとジーニアスとゼロスが順々に少女たちのもとに集まった。
「どうしたのだ?」
「リフィル先生が見あたらないんです」
状況を確認するリーガルにステラが答える。ジーニアスが辺りを見回すと一枚の紙切れの存在を確認して、それを手に取る。
「これ…!」
紙に書かれた内容を声にだして読んでみる。そこには気になることがあるから調べものをしたい、といったことが書かれていた。
(……)
調べもの、という言葉が少女の頭に引っかかる。ひょっとしてリフィルは眠れなかったわけではないのではないか。あれは、その調べものをしにいくために、態と起きていたのだ、と少女は思う。
そうしているうちにアルテスタとタバサが何事かと部屋から出てくる。事情を説明すると、二人は心配そうな表情を浮かべた。
「あっ、わたし…ロイドを起こしてくるね」
未だ起きていないロイドを呼びに、コレットが彼が眠る部屋に向かう。暫くしてロイドも慌てて飛び起きたので、ジーニアスが事情を説明する。
「明け方に、レアバードが南の方へ飛んデいくのを見まシた。…あレがリフィルさんだったのでハ?」
タバサがそう告げる。話を聞いて、リーガルは顎に手を当てて考える。ジーニアスは心配そうに、どうして、とだけ呟いて俯いた。
「南の方というと…アルタミラか…」
「そういえばリフィルさま、ちょ〜っと様子がおかしくなかったか? 異界の扉がどうとか…」
怪訝な表情を浮かべてゼロスが呟く。確かに昨日のリフィルの様子は誰が見ても明らかに不自然だった。ずっと何かを考え続けているような、そんな表情ばかりが目についた。
「ロイド…リフィル先生、追いかけなくていいの?」
沈黙を破ったのはステラ。飴色の髪をふわりと揺らしてロイドの顔を覗き込む。じっ、と考えていたロイドだったが、その言葉とともに結論を出したようだった。
「そうだな…追いかけよう。今、離ればなれになるのはよくない」
「…だよね」
飴色の髪をふわり、と靡かせてステラは微笑んだ。後ろから声がしたのは、それと同時だった。