8-2
アルテスタとユグドラシルの関係、ロディルと魔導砲について、ふたつの世界を繋ぐ二極のこと。あまりに多くのことを一気に聞いたせいもあり、ステラは軽く眩暈を覚えた。
「ステラもやっぱり混乱するよな。俺も混乱したぜ」
そう言って、ロイドが頭の後ろで腕を組みながらへらりと笑う。そんな彼を見ると、リフィルは横で溜め息を吐いた。
ステラはそんなロイドとリフィルを見て笑みを浮かべる。ちらりとみんなを目で追うと、見慣れない青年がひとり。
「あ、れ…あなたは…?」
「ミトスだって! もう、ステラも聞いてたじゃない」
首を傾げるステラにジーニアスが説明する。倒れる前に確かにその名は聞いていたはずなのに、なぜかぽっかり穴が空いたように記憶が消えている。
「…ごめんなさい。私…倒れる前の記憶が曖昧で」
「もうその時にはかなり具合が悪そうだったからね」
ステラは謝りながら曖昧に笑う。しいなが心配そうに顔を覗き込むので「もう大丈夫だよ」とステラは返しておく。ミトスもステラを心配そうな眼差しで見つめて、小さく会釈をした。
「…あの、改めて自己紹介させてください。ボク、ミトスっていいます」
「私はステラっていうの。よろしくね、…ミトス」
差し伸ばされた少女の手を、ミトスは少し躊躇いながら握り返す。少女のアクアマリンの双眸がミトスを捉えると、嬉しさで細められた。それにつられてミトスも思わず頬を緩める。
「…よろしく」
触れた手のあたたかさに、ステラはどこか懐かしさを孕んだ優しさを感じた。それは、窓から射し込む太陽の光のおかげなのだろうか。とにかく少女は、その優しさに安堵する。
「あのさぁ、ステラちゃん?」
呼ばれる声に振り返る。その先にはゼロスが、赤い髪をゆらりと揺らして立っていた。サファイアブルーの双眸がこちらを覗いていて、けれどその中の感情は少女からは窺い知れない。ステラは首を傾げてゼロスを見つめた。
「なぁに?」
「あとでちょーっと…いいか?」
「? …うん」
ステラは合点がいかないまま頷く。あのサファイアブルーの瞳の力なのだろうか、どこか有無を言わせない雰囲気を感じとったステラには首を振ることができなかった。
「じゃあ…また後で、な」
そう一言だけ残すと、ゼロスは身を翻して部屋を後にする。納得がいかないのはロイドたちも同じようで、頭上に疑問符を浮かべながらふたりのやりとりを見つめていた。
「なんだってんだい、あいつは…?」
怪訝そうな顔つきでしいなはぽつりと呟いた。