7-2
氷の神殿から出て数歩のところで、ロイドたちは空に異変があることに気づいた。
「な、なんだ……?」
目を見開いてゼロスが声を漏らす。
空にはどす黒い雲が渦を成しており、その中心から、凄まじい勢いで雷が落ちる。それからドォン、という鈍い音が鼓膜を震わせた。
「雷の方からすごいマナを感じる……」
ジーニアスが、誰に言うでもなく呟いた。
「あれ…村の方です…」
方角を確認すると、プレセアが少し引きつった表情で言う。
(これが、嫌な予感の正体なの?)
異変を口にするロイドたちを見てステラはふと思う。しかし、まだ終わってはいないという漠然とした直感が残る。それにしても。
「……っ、」
気分が悪い。先程の闘いで体力を使い果たしたのだろうか、残る眩暈にステラはふらりとよろける。
「大丈夫、ステラ?」
「……うん、なんとか…」
やはり心配そうに振り向くコレットに、ステラは顔に無理矢理微笑を貼り付けた。
「それにしても心配ね」
「そうだな…行ってみよう」
顎に手を添え考え込むリフィルにロイドは頷くと、レアバードに跨った。
* * *
行く先はオゼット。
ロイドたちが到着したときにはすでに村は炎が盛り、真っ赤に染め上げられていた。
「そんな…ひどい…」
今にも泣きそうなコレットの声音がぱちぱちと燃えた木片が弾ける音と重なって聞こえた。
この様子で生存者なんて…そんな悪い予感がロイドを襲ったとき、ジーニアスが「ロイド! あれ!」と声を上げた。
指の先にはひとりの青年。俯せになって燃える家の近くで倒れていた。
ばちん、と一際大きい音がたったと思うと青年のすぐ横に炎を纏った何か支柱のようなものが倒れ込む。
「あ…危ない!」
コレットがぎゅ、と目を瞑っている間にロイドはその青年に駆け寄る。意識の有無を確認するが、どうも彼は完全に意識を失っているようだ。
ゼロスとロイドのふたりで青年を担いで安全な場所へと非難させてやる。
「俺たちは消火するから、先生たちはそいつの様子を見ててくれ!」
「……分かりました」
ロイドやジーニアスたちは村の消火活動にかかる。リフィルたちは青年を黙って見つめることにした。
暫くした後、オゼットは村の外に被害を出すことなく鎮火された。
続けざまの肉体労働で、ロイドたちはかなり憔悴した様子でリフィルたちのもとへと戻ってきた。
「先生、そいつは」
大丈夫なのか、とロイドが訊こうとしたときちょうど、リフィルの膝元で横になっていた青年が呻き声を漏らす。