7-1
「虎牙破斬!」
「紅蓮剣!」
氷の神殿のなかで、闘う声が反響する。
疲弊した精霊は、マナの欠片を辺りに散らしながら「力を貸そう」と囁いた。
07.エラーコード「私を使役できるほどの誓いをたてよ」
厳粛な雰囲気を漂わせながら、セルシウスはしいなを見つめる。
「ふたつの世界がお互いを犠牲にしなくてもいいように…セルシウス、力を貸してほしい」
「……承知した。きっとお前たちの力になってみせよう」
しいなの契約に、セルシウスは頷くとマナの欠片とともに霧散して消えた。
契約のための戦闘で憔悴したロイドたちは一際大きな溜め息を吐いてその場でしゃがみ込んだ。
「ううう…寒い…契約するまでは緊張してて気づかなかったけど、寒いねえ」
開口一番のしいなの言葉。それを聞くなりゼロスがニヤリと口角を上げる。
「年をとると、暑いのとか寒いのとかがダメになってくるんだってよ?」
「う、うるさいねえ! あたしはまだ一九だよ!」
茶化すようなゼロスの態度に、しいなは躍起になって声をあげる。それを見てゼロスは「ああ恐い」と笑みを深めた。
「…寒くない…寒くないわよ…」
「? どうしたの先生?」
ぼそりと呟くようなリフィルにステラは飴色を揺らして首を傾げる。
リフィルは少女の声にはっとして「な、なんでもないのよ」と苦笑を浮かべた。
「そろそろ外へ向かおうぜ、日も暮れちまうしさ」
ロイドは出口を指して言う。その声に頷くと、みんなは疲労した体を叱咤しながら出口を目指す。
(嫌な予感……)
先日からの嫌な予感が、再びステラの背を駆け抜けた。本能的な直感としか言いようのないそれは、常にステラを不安にさせる。少女は眉尻を下げて袖をぐっ、と握りしめた。
「どーしたのよ、ステラちゃん?」
声をかけるのはゼロス。その言葉にロイドたちもステラを振り返る。
「大丈夫か、ステラ? ちょっと顔色が悪くないか?」
「ほんとだ! 大丈夫?」
僅かに青白く見える少女の顔色にロイドとコレットが心配そうにステラの顔を覗き込む。
ステラは、ふたりの心配そうな眼差しに感謝と申し訳なさを感じた。嬉しくて、でも謝りたい気持ちで、少女は顔を伏せた。それからふわりとした笑顔を浮かべて顔を上げる。
「大丈夫だよ、ちょっと疲れてるだけ」
「ほんとに?」
首を傾げるコレットに再びにこりと微笑みかけてステラは歩み出した。