6-3
「外は吹雪だぞ?」
「分かってるよ」
「私はあまりお勧めしないけれど」
「ま、ちょっとだけ…な」
ロイド、リフィルが忠告するも、お構いなしといった様子でゼロスが言う。
結局、街の外に出ないこと、それから決めた時間までに戻ることを約束にゼロスは外出することになった。
「んじゃ、いってきますか」
そう言ってゼロスは宿屋を後にした。
「しっかしまた、ゼロスも相当な変わり者だねえ」
部屋に入り、一休みを決め込んでいる最中にしいなが呟いた。そうだねえ、とコレットは心配そうに頷く。
「どうしてこんな雪のなかを出歩くんでしょう?」
「雪が好きなんじゃないかなあ?」
首を傾げるプレセアに、コレットがひとつの答えを示す。きっとそうかもね、とそこでゼロスの外出の理由は落ち着いた。
そんな会話の流れを、ステラは頭の隅で聞いていた。けれど、と思う。
(好きなら、あんな表情…するのかな?)
雪が好きだというのなら、彼のあの表情は一体なんだったのだろう、ステラにはそう思えるのだった。しかし実際のところ、それを見たのは恐らく自分だけだから、確信は持てなかったが。
暫く経った後、こんこん、というノック音が部屋に響く。微睡んでいたステラの意識は、それによって一気に現実に戻される。
それはみんなも同じようで、しいなたちも首を傾げて身を起こす。
「誰、ですか?」
「ただいま戻ったぜ」
「……ゼロスくん?」
「そーそー」
ステラが扉を少し開くと、視界には緋色が広がった。それは先程まで外を出歩いていた、ゼロスの髪の色。
帰ったばかりなのか、防寒マントからは雪だったものが雫を成して床へと落ちる。
「おかえりなさい…寒くない?」
「それは平気だけど」
ゼロスはステラを制し、それから「ちょっといいか」と部屋の外を示す。
「? 構わないけど、」
突然の誘いにステラは首を傾げるが、お構いなしにゼロスに腕を引かれる。