6-2
「お、重かった…」
「ステラも嫌だったらちゃんと言いなよ?」
「……ん。ありがと、しいな。でも嫌じゃ、ないの」
そう呟いて微笑む少女を、しいなはきょとんとした表情で見つめていた。
少女は嫌ではない、と伝えたが、実際は嫌ではないというわけではなくて、何か別の感情が心のなかに存在したことに気がづいた。それは。
(うれ、しい……?)
必要以上のスキンシップをされて、どうして嬉しいと思えたのか、ステラには分からなかった。
ゼロスに関することは、殆どすべてが少女にとっては解せないことばかり。
「どうしたんだい、ステラ?」
「なんでもないよ?」
尋ねるしいなに、ステラはふるふると首を振る。それからにこりと笑ってみせる。
「そうかい? ならいいんだけど」
しいなは違和感を感じながらも何でもないと言う少女に、これ以上追求をするのは止める。
さくさく、と雪を踏む音と、吹雪く風の音が周りを包み込んでいるような、感覚。
やや前方ではロイドとコレットが談笑しているのがステラからは見えるが、内容はそれらの音によってかき消された。
* * *
「うわー! しっかしすごい雪だったな!」
宿屋に足を踏み入れて、ロイドがさぞかし興奮した様子で声をあげる。
ばさばさ、と防寒マントを叩くと雪が落ちて床に染みをつくった。
「今日の吹雪はかなりひどいらしいわ」
部屋を予約するときに店主と世間話でもしたのだろう、リフィルが告げる。そして「セルシウスとの契約はこの吹雪が落ち着いてからにしましょう」と提案する。
「そうだな…この雪じゃ大変だもんな…」
ロイドは考え込むように呟いてから「それでいいか」と尋ねると、みんなはこくんと頷く。
「じゃあ暫くは自由行動、ってわけか」
「そうなるわね」
ゼロスが確認をすると、リフィルが頷く。
「とりあえず、部屋もすでに入ることはできるわ」
「じゃああたしは部屋に戻るかね」
先に休む、としいながロビーを後にする。続くように、みんなぞろぞろと部屋へと移動し始めた。
「俺さま、ちょっと外出てくるわ」
ゼロスの声に、ロイドたちが振り返った。