真面目な君と木の下で。
( 10/05/29 15:22 :小咄)

(また寝てる……)

青々と茂った夏緑樹の下、木製のベンチで本を顔に被せて眠っているひとりの青年。最近は、そんな彼をよく見かける。冬花はちらりと彼を一瞥をすると、なんとなくそう思った。
いつもならば気にもとめずに通り過ぎてしまうのだが、今日に限っては急ぐ用事も特にないため、冬花はその場で歩を止める。

(よく見ると、かわいい……)

ふわふわとした茶色い髪。呼吸で上下する胸元に、零れた吐息。
もう一度見つめてみた彼が、冬花には妙に可愛く見えた。そう思っていると、突然の衝撃。

がしり。

「……っ!」

その衝撃の正体は、先程の青年が冬花の腕を引いたときのもので。冬花が唐突さに目を白黒させていると、青年はがばりと起き上がって少女の方を見つめる。

「ごめん……驚かせた、よね?」

「……だ、だいじょ…ぶ」

ばくばくと鳴る心臓を落ち着かせながら冬花が答えると、よかったと青年が笑う。頭を掻きあげてわしゃわしゃと髪を散らかせるのを、冬花は呆けながら眺めていた。

「君、さ……いつもここ、通ってるよね」

こくりと頷く冬花を確認すると、青年はそのまま言葉を続ける。

「よかったら、その……名前とか、訊いてもいいかな? ああいや、無理ならいいんだけど、ほんと……」

「……冬花。羽鳥冬花です。わたしも、あなたの名前、知りたいわ」

「入江…正一」

笑みとともに返ってきた言葉に、ひどく安堵したように、青年も微笑みを浮かべていた。






復活夢とか初めて書いてみたという、ね!
一度はシリーズとかでいいので書いてみたいジャンルではありました。ただ、どう話に加えるか、など色々と難しいですよね。
私はクフフとマシュマロさんと正ちゃんと酢花゜が好きなわけですが、相手を誰にしようかとかも悩みどころです。
と、雑食性を垣間見せつつおしまいです。

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