B




逃げてきたテーブルでは、紫原と緑間がなにやら言い合っている。
お玉とフライ返しをまるで刀のように交差させてお互いを押しやっていた。

「だーかーらー@@はカレーは甘い方が好きって言ってたっつってんじゃん」
「だからといって砂糖を入れるのはどうかと間違っているのだよ!」
「コーヒーなんか入れたら苦くなるし!」
「隠し味だ!」


隠し味でコーヒーを入れるのは正しいが、誰か缶コーヒー(無糖)ではだめだということを緑間に教えてやってほしい。
甘いんだか苦いんだかわからない臭いを発するカレーの鍋を見て部長は込み上げてくる吐き気を必死に押さえつけた。


「ミドチンのそういうまわりくどく考えるの@@嫌いって言ってた」
「(ガァンッ)…っ!…そ、そういう紫原こそ安直で子供っぽいところにはもう付き合いきれないと@@が言っていたのだよ」
「(ガァーンッ!)い…!言わないし!!@@はそんなこと言わないし!嘘ついてんじゃねーよ!」


もみくちゃになる二人の目には涙が浮かんでいて、その他にもこれがいやだと言っていたこれが苦手だのどうのこうのと最早持論だろそれという@@の名を借りた悪口大会が始まってしまった。長身の男二人が揃いも揃って女子のような喧嘩をしているのは実に滑稽だ。


「@@が俺のこときらいになるわけねーじゃん!きら…きらい…」
「@@が…俺を…」


嫌われるところを想像したのか、顔を青ざめさせて二人はその場に崩れ落ちた。


「……泣くならいうなよ…」


部長はそっと二人の背中を撫でた。





お次は黒子のテーブルだ。
彼はひたすらお湯を煮詰めている。
お湯を煮るだけでなんのアクションも起こさない黒子を見て部長は首を傾げた。


「あの…何やってんの?」
「…スープを作るつもりだったんですが、いくら味付けしても色がつかないんです」
「え?」


味見してみてください、と差し出された小皿に入れられた無色透明の液体。なんのにおいもしなかった。そっと口に含む。


「ブッ!!!」


無色無臭の液体は口にいれた途端激物と化した。
筆舌に尽くしがたい意味のわからない味が口一杯に広がっている。
飲み込めない、飲み込んではならない。第六感が吐き出せと脳に命令をくだしている。
朦朧とする意識のなか、部長は泣きべその後輩たちへ最後の力を振り絞って言い残した。


「@@…@@ってひとを…ここに…!!」


どうかこの戦争を、終わらせてくれ。
一縷の望みをまだ見ぬ英雄に託し部長は意識を手放した。




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