ゲーセンへ行こう(黄瀬




「え、おどんの?なんで?」
「そういうゲームだからッス!」
「俺盆踊りすらろくにできない人種なんだけど…」
「大丈夫だから一回!ねっ!」
「いやねっ!とか言われても…」


体も心も弾むみたいにウキウキするのが止められない。
なんていったって二人っきり!
いっつも邪魔するバスケ部のみんなを出し抜いて二人っきりで過ごせる空間のよさをわかってほしい。

引け腰の体をぐいぐい引っ張ってゲーム機の前に立たせる。
やろうとしているゲームは比較的新しい、体の動きをカメラで感知して競い合うダンスゲームだ。


「へーお手本通りに踊るの…」
「簡単だから大丈夫ッスよー」
「つーかこれお前が有利なだけじゃん!」
「たまには俺に負けてもいいんじゃないッスか?」
「うっぜぇええ…!」
「逃げるんスかー?」
「誰が逃げるか!!俺が勝ったらなんか奢れよ!」
「言ったッスね!じゃっ俺が勝ったらちゅー1回で!」
「絶対に勝つ」


この人の闘争心に火がついてしまえばこっちのもの。
めらめら炎を燃やすまっすぐな瞳に見とれつつ、選曲開始。

比較的メジャーで、彼も知ってる音楽を選んでゲームをはじめた。
もうそれが笑っちゃうなんのって…


「あわっ、だっ」
「ちょ、笑わせないでほしいッス!」
「こっちは真面目にやってんだよ!」


動きについていけず反対に手を振り回したり足をもつれさせて転んじゃうとことかもうかわいくって!時々動きを止めてオロオロされると抱きつきたくなる衝動を押さえるので精一杯。でも手は抜かない。だってちゅーが掛かってるッスからね!


「無理…もう無理…」


一曲目はもちろん俺の勝ち。スコアも最高だしランクはマックス。
全然出来なくて落ち込むのはいいけども

「ほら次始まっちゃうッスよ!」
「やだむりもうやんなぁい!!」
「やんなかったらちゅー三回で」
「ふざけろてめえ!!」


いきり立った彼はまた画面に向き合ってつたない動きで踊り出す。
いやもう超かわいい、画面よりこっち見てたい。


あまりにも彼に目を奪われていたせいで油断した俺はさらさらしたパネルの上で足を滑らせた。


「いっだ!!」
「えっなになに!?」


丁度曲が終わるところで、その曲は踊りきったけど足首がじんじんする…!やばい捻った。動けなくなったら赤司っちにどやされる…!!

曲は次で最終だけどこの調子で動いたら悪化させそう…



「ご、ごめん一人で踊ってもらっていいスか…」
「はあ!?むむむ無理!クリアできない!」
「お、俺の意思をついでほしい…ッス…」
「黄瀬ーーーーーー!!!」



茶番もほどほどにゲームは無情にも最後の曲を勝手に決め、やかましい音楽を流し始める。あ、これ結構難しいやつ…


「くっそもう意味わからん!」


とは言いつつ、彼のステップは最初より軽やかだった。慣れてきたのか腕を明後日の方向に振り回すこともなく確実に点数を獲得していく。

動き回る背中が頼もしいなあと思った。
そういえばすぐに近づくからこうしてまじまじと彼の背中を見つめたことはなかったかもしれない。何しててもかっこいいとか、反則ッスよね。


(やっぱ好き)


ジャン!と最後の音と共に決めポーズで終わり。
後ろにいつのまにかギャラリーができてて、一人で踊りきった彼へ拍手が送られていた。初のクリアだ。


「き、黄瀬ーー!やったぞクリアしたぞ!!」
「さすがッ」


俺も立ち上がって拍手でもしようかとしたとき感極まった彼が

だ き つ い て き た



ええええええええ!!!ななななんスかこれぇええ!!普段こんなことしないくせに!どうしよううれしいだきしめかえしたいあれっなんで手動かないんスかめっちゃ顔あつい


「あわっ…あばば」
「やればできるもんだなー!さすが俺!」
「そ、そッス、ね」


よかったね!かっこいいー!!あれ、あの人モデルの黄瀬じゃね ほんとだー!!
称賛で沸き立っていたギャラリーが別のことで騒ぎ始めカメラのシャッター音が鳴り出した。撮られてる!俺とこの人のハグシーンが!画像ください!

「うおおおなんかめっちゃ人いる!逃げんぞ黄瀬!」
「も、もうどうにでもしてほしいッス…」
「は?」


キセキとゲーセン(verR,K)

足の痛みとか吹っ飛んだッス

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