ゲーセンへ行こう(黒子




「これって女の子がやるもんじゃないの」
「男の子だってやりますよ」
「ええー…」


渋る彼の背中を押して半ば無理矢理プリントクラブーーー略称プリクラの機体の中へ二人揃って入る。
思ったより明るい内部にうわまぶしっと彼は目を細めた。かわいい。
マネージャーに連れられて一回来たきりだったが、次来るなら絶対彼とだと密かに心の中で決めていた。形に残る彼との証が欲しいがために。


「俺写真嫌いなんだよ!写真撮ると魂吸われる!」
「いつの時代の人ですか」
「真ん中写った人死ぬって」
「二人で撮ったら真ん中も何もないですよ」
「えー…なにこれ美白ってなに」
「肌の色が決められるんです」
「黒子肌白いし美白なんかしたらまっちろになるぜ」
「(ばん!)」
「え、な、なにどうした!」


突如頭をライトにぶつけた僕を見て彼は焦る。

まっちろって…!そんなかわいい言い方やめていただけますか大の男がまっちろって…!


「とりあえず普通にしましょう普通に」
「黒子…でこ赤いぞ…」
「大丈夫です隠してくれますからプリクラは」
「いやそうでなく…」


そうこうしているうちに設定してある制限時間は無情にも過ぎ、勝手にフレームが何種類か選択されてしまう。
甲高い女声がカメラを見ろと指示を出してきた。


「え?え?カメラどこ」
「ここですってここ」
「え?」
「近いです」

パシャっ


「目潰れる!!」
「そんな近くで見るから…」
「目がァァア…目がァァア…!黒子どこぉ…!!」
「ここにいますよ」

ゆらゆらさ迷う彼の手をとったところで二枚目がパシャリ。
滑稽なポーズで撮られましたねこれ。


「クッソ!なんだこのあぶねえ写真機は!」
「遠くで見たら大丈夫ですってば」
「写真機怖い…」
「(うわばばばばばbそそそそんなしがみついてこないでくだああ)」


パシャっ



複数枚撮って始終彼は僕にしがみつきっぱなしで笑顔もへったくれもない。全て撮り終えた頃には二人して疲れた顔で機体を出た。顔が熱くて仕方ない。
また来てね!とのたまう機械にむかって「もうこねえよ!」と叫ぶ彼を引っ張って次はピンク色の落書きコーナーへ突入。


「何かくのこれ」
「好きなこと書けばいいんですよ。スタンプとかもありますし」
「わーう○こあるう○こ。つけとこ」
「連打やめてください。トイレにしたいんですか」
「黒子目デカっ!!」


とりあえず汚物スタンプを押したがる彼を止めながらあーだこーだと落書きを進めていく。ほとんどが目をつぶってたり見切れてたりでひどいものだったがそれすら愛しく思えるのは惚れた弱味でしょうか。病気?ええ、上等ですとも。


ほどなくして落書きも終了。
まともなものが出きる気がしないまま取り出し口の前で待機。


「もう絶対やんねえ」
「いいですよ、僕とさえやってくれれば」
「もうやんねえってば。あ、出てきた」


出てきたシールをはい、と渡されて僕は固まった。
別に汚物スタンプ満開でうわきたなっとか思ったわけではなく。

最後の一枚、唯一まともに撮れたものの落書きは彼に任せた。
その場面を僕は見てなくて出来上がりで始めて見た。

拙い文字でお互いの名前が書いてあって、上に「だいちゅき(はあと)」なんて寒々しいスタンプが押してあったのだ。
これを黄瀬くんあたりにやられたら影の餌食にしてやっただろうが、相手は彼。


「い…一生大事にします…!!!!」
「劣化すんだろ」



部内全員に恨みのこもった目で見られたけど知ったこっちゃありません。
行ってよかった。


キセキとゲーセン(typeT,K)

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