A
「@@、ネクタイ」
「そこにあんだろ」
「締めてほしいんだよ」
「アンタね…」
一人は有能であるのに@@に対してだと色々と子供じみている赤司。
もう一人は、
「とうさまー征華もネクタイー」
「お前はいらないの。閉まってこいそれ」
「なんで!征華もかあさまとおそろいがいい!!」
「わがまま言うんじゃねえ」
「征華、お前がもう少し大きくなったら征華のネクタイを買ってあげるから今は我慢しなさい」
「かあさまがいうならしょーがねえ…」
「@@の口真似をしない」
「はーい」
「俺のいうこと聞かねえくせにこいつは…」
赤司征華、幼稚園年中組。正真正銘赤司と@@の娘である。
どうやって作ったか?赤司に不可能はないという一言でしか説明できないことを許してほしい。
顔立ちは赤司によく似ていて幼いながら凛々しいのだが、性格は@@に似て如何せんお転婆。
父より母を尊敬しているので、@@は蔑ろにされがちであった。
「だってとうさまよりかあさまのほうがすごいもん」
「いいよもうそれで。早く朝飯食え」
別に尊敬されたいわけじゃねえし…とこぼしながらも洗うために持ち上げた皿をへし折っているのを見て赤司は笑っていた。
赤司家ではスキンシップが重要視されている。
嫌なわけではないが、いくつになっても気恥ずかしいという気持ちが@@にあることを彼は赤司に何度も告げたが
「@@、僕を遅刻させる気か?」
「何時に出たって別にいいくせに」
「僕はいいけど、征華が幼稚園に遅れるよ」
「あーーもう!わかったよ!!」
朝、征華を幼稚園まで送るのは赤司の役目。夕刻に迎えにいくのは@@と役割が決まっている。今日もそう。
でも赤司は@@からいってらっしゃいのキスがない限り笑顔のまま玄関から動きゃしないのだ。
今朝がたと同じように赤司の顔を引き寄せ軽く唇を触れあわせてそのまま送り出そうとしたのだが、ガッと後頭部を掴まれ朝から深い方をするはめになった。
「…ん、っは…」
「…ぶぁっ!ば、ばか!征華がいるだろが!」
「征華なにもみてないよ」
賢い愛娘は両手で目を覆って両親のスキンシップをシャットアウト。
ああそう…と@@が呆れている間にもう一回口付けて赤司は満足げに微笑んだ。
「行こうか征華」
「はーい。いってきまーす」
「おう行ってこい…」
娘の額にもキスして二人が玄関から見えなくなったところで@@はがっくりと肩を落とした。威厳なんてもにはとうの昔になくなっている。
「あー…掃除しよ」