B







「ただい、」


ガゴンッ


「ま……何やってんの…」
「何も…!!」


仕事から帰ってくるなり壁に顔を打ち付けてお迎えしてくれた緑間に何もないわけがないじゃないか。
壁から離れ、赤くなった鼻先を擦る緑間を見て@@はおや?と思う。


「お前眼鏡は」
「……今はかけてない」
「かけろよ。死ぬぞ」
「死ぬわけがないのだよ」


とか言いつつ緑間は@@に背中を向けた途端目測を誤ってトイレのドアノブに手をぶつけて悶絶している。


「そこまで下がった視力は今更もどんねえぞ、医者ならわかるだろ」
「視力云々の問題じゃない」
「じゃあ何」
「……」
「本当にお前の思考は昔から理解できねえよ真太郎」
「!」
「さーて飯飯ー」



緑間はこの瞬間確かに手応えを感じた。
反応はせしども、そこまでの威力を感じなかった。@@の顔がどこにあるかわからなかったせいだろうか。

@@顔を見て戸惑うなら、見えないようにすればいい。
あれだけ悶々として緑間が出した結論はそれ。第三者からすればそれ本末転倒だが、過剰に反応を示すことがなくなれば緑間はそれでいいらしい。


「(これで慣れていけばいいだけの話なのだよ)」



内心ほくそ笑んで、人差し指を眼鏡に当てた。かけてないので空を切っただけである。






勘弁してほしいなあ。@@は思った。

今朝は何事もなく眼鏡タイプであった緑間が夜帰ってきてみればアイデンティティーをかなぐり捨てている。裸眼の視力が0,00いくつ、の次元の彼が矯正無しに日常生活なんかできるわけがないのに緑間は頑なに己を取り戻そうとしない。

食事は一口食べようとするごとに皿から箸が逸れてテーブルに突き立てるし後片付けもいつ障害物に蹴躓くかわからないから任せられなかった。
今ソファーに座って細目で読んでいる本も逆さまだから読めているわけがない。



「眼鏡はどこだ」
「……な、無くした」
「つけない嘘をつくのはやめなさい」
「知らん」
「いいからかけろお願いだから」
「しつこいのだよ、@@」
「おめーに言われたくねーよ」



緑間は逆さまのままの本で顔を隠すようにしてはぐらかす。
埒があかないと判断した@@は強行手段に出るため緑間の隣に腰かけた。二人分の体重にソファーが軋んだことで緑間が本を顔から遠ざける。

「眼鏡かけろ。真太郎」
「……」

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