B





「鼻血出すとかアンタ女としてやばくねー?マジ受ける」
「はは…(いや元女じゃないし…)」


ほどなくして黄瀬は目を覚ましたが、そのとき側に@@はおらずサッカー部のマネージャーがかわりに介抱してくれていた。扱いはぞんざいだったが。 両の鼻の穴に詰められたティッシュを引き抜きながら黄瀬は忙しなくきょろきょろと辺りを見回す。


「あの、@@っち…@@、くんは?」
「あそこ」


マネージャーが指差した先に、シュートの練習をひたすらしている@@がいた。結構な距離があったが、黄瀬の目にははっきりくっきり@@の勇姿が映っている。


「@@っち…!マジイケメン…!これ以上惚れらんないッスよマジで…!やだどうしよ…!!」
「なに、アンタ**が好きなん」
「好きとかそういう次元じゃないんスよ!だってあれ見てあれ!もう背中からしてたくましいっていうか飛びかかりたい…力の限りしがみつきたいっていうか…!あ、やっぱ見ちゃダメ!見続けて好きになられたら困るッス!」
「あんたマジめんどい」
「そっすよねえ…恋って面倒ッスよね…でもやめらんない…」
「ポジティブだなこいつ」


荒い鼻息を繰り返しながら頼んでもいないのに@@のここがいいとかあれがいいとか語り始める黄瀬を危険と悟ったマネージャーは籠からドリンクの入ったボトルとタオルをセットで押し付けるように渡した。

「そろそろ休憩だから**にそれ渡してきて。他のはあたしがやっから」
「喜んでーーー!!!」
「はやっ」


カモシカも目じゃない瞬発力で黄瀬はその場から猛ダッシュした。
向かうは部員とボールをいじりながら話している@@一択。
砂煙をあげながら走ってくる黄瀬を目視した瞬間、@@の顔がひきつった。



「ストップ!!」
「はい!」
「…お…お前…もう大丈夫なの…」
「し、心配してくれるんスね…」
「主に頭の方な…」
「う、嬉しいッス…!あ、これタオルと飲み物!お疲れさまッス!」
「あ、ど、どうも」


@@が黄瀬からタオルを受け取ると、途端に周りからブーイングが上がった。バケツリレーよろしく部員から部員へ、@@がほいほいと後ろにおいやられ黄瀬が男たちに囲まれた。


「君超かわいいね!何年?どこのクラス!?」
「なんで気づかなかったかな〜こんな美少女!」
「@@と知り合い!?どういう関係!?」
「まさか彼女とかじゃないよね!?」


矢継ぎ早に繰り返される質問の嵐。元の姿での女子に囲まれてされるものと同じのを感じた。男でも女でもこれかよ…黄瀬は苦笑いでえーっと…と言葉を濁す。彼女です☆なんて言ってみたいものだが、ここで選択を誤ると@@の立場が危うくなるかと判断したためだ。だって男たちの勢いが半端じゃない。


「邪魔だ散れ散れ!触んなどっか行け!」
「何彼氏面してんだよ!」
「彼氏だよ」

「「「えっ?」」」


部員の声と、黄瀬の声が思いっきり被さる。
@@は乱暴に自分の後頭部をばりばりかきながら苦虫を噛み潰したような顔で部員たちを押し退けて黄瀬の前に立つ。


「お前も、気がねえならそうやって笑わなくていい。勘違いされてえのか」
「そ、そういうわけじゃ…ないけど…」
「じゃ愛想笑いやめろバーカ」



舌打ち混じりに吐き捨てて、@@は黄瀬の腕を掴んでぐいぐいどこかへ引っ張っていく。背後からまたブーイングが上がっているが@@のうるせえ!!の一声で静まり返った。振り返り様の怒声だったので、黄瀬にもその表情が見えていたが世にも恐ろしいものであったという。

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