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走っている間も太鼓のような音は絶えず追いかけてきているように思えた。音が大分聞こえなくなったところで三人は足を止めたが、現在位置なんてさっぱりわからない。
民家どころか街頭もなく、ただ山と原っぱのようなものしか見えない。


「タクシーってどこまできてくれんのかな…」
「まず電話が通じないのだから意味がないのだよ」
「あ、そっか」
「二人余裕過ぎっしょ…」
「まあ慣れてるからな…怖いか?高尾」


@@が真面目な顔で問うてきた。
はっきり言って怖い。怪奇現象は高尾にとってこれで二度目になるわけだが、慣れられる代物ではなかった。
大きく息を吸って、吐いて「ぶっちゃけ無理」と溢す。
そんな高尾を見て@@はハハハ、と声を上げて笑い両手で高尾の肩を掴んだ。


「映画の続きだと思えよ」
「あれ全員死んだじゃん」
「そりゃ登場人物に俺も緑間もいなかったからな」
「何をバカなことを……」
「だってそうじゃん。俺らがいたらあの映画5分で終わるよ」


だから大丈夫だ

あの太鼓の音が鈴の音が再び近づいてきている。
さっきまではなかった背筋に寒気が走るような何かの笑い声まで混ざっていた。しかしもう@@は走らない。緑間もため息をついて左手のテーピングをほどいていた。


「マジもう…!もう…!!@@男前…!抱いてっ…!!」
「やだ無理」
「こんな頼りないのが男前など、世も末なのだよ」
「ソウダネー緑間のほうが男前ダモンネー」
「……」
「ガチ照れやめてくんない」


ドン!!!!!ドン!!!!!ドン!!!!!


鼓膜をつんざくほどの轟音に高尾は耳を塞いだ。
何も見えないはずの暗闇のなかにうぞうぞと、影のようなものが蠢いているような気がした。


「相手が俺じゃ無理に決まってんだろ」



逞しい背中が駆け出したあとのことは、よく覚えていない。

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