A


「きさらぎ…?」
「あれ」


@@が指差したのは真っ暗だった電工掲示板。今でははっきりと「次はきさらぎ駅」と見たことのない駅名が表示されていた。


「真ちゃん、俺ら乗る電車間違えたんじゃね?」
「ちゃんと確認した。この電車で間違いないのだよ」
「わかんねーからこの駅で降りて引き返せばいいじゃん」
「…それもそうだな」


ほどなくして、電車はきさらぎ駅とやらで停車した。アナウンス等が一切なくおかしいとは思ったが@@と高尾はさっさと降りていってしまう。
眠った乗客は誰一人として降りない。外に出たのは三人だけだった。


「うっわ駅真っ暗じゃん」
「やだー@@くーんアタシ怖いわー」
「もっと清純っぽい感じで言えよ。全然ぐっとこない」
「それ難しいなちょっと待って」

「おいバカ二人。やはり何かおかしいのだよ、降りない方が…」


緑間が言うやいなや、電車はまたなんの案内もなくドアをさっさと閉めあっという間に発車してしまったではないか。
緑間がおい!?と電車に叫んだところで電車が止まるはずもなく。


「大人しく次の電車待とうよ真ちゃーん」
「まだ6時だし電車くんだろ」
「…どこまでもお気楽でいいな、お前らは」
「誉められちゃったな高尾」
「そうだね@@」
「どうでもいいが@@にひっつくのをやめろ高尾」
「どうでもいいならいいじゃん」
「…!…!!」
「怖いって真ちゃん」



真っ暗な駅で、どれだけの時間が経っただろうか。相変わらず携帯は圏外だし、電車は一向に来ない。喉も乾いた。しかし自販機のひとつもない寂れた駅では待つしかなかった。


「喉かわいたーつか腹へったー」
「俺水ならあるよ。飲む?@@」
「さすが高尾飲む飲む」


高尾の鞄から出てきた水を嬉々として受け取る@@。緑間は見た。
高尾がペットボトルと@@の唇が近づくたびよし!よし!と小さくガッツポーズをしているのを。


「っ待て!飲むな@@!」
「んえ?」
「はい遅いー!@@と間接ちゅーゲットー!!」
「高尾貴様線路に突き落とされたいのか!!」
「真ちゃんは物騒だなもー」
「貸せ@@!そんなもの俺が飲む!」
「だめだっつの元は俺の水だからね!?」
「知るかこのドスケベが!」
「どっちがよ!!」
「ほい高尾ゴチ」

高尾が手元に戻ってくると思っている水だが、二人が言い合っているうちに@@が飲み干したので最早ゴミである。柔らかい素材でできたそれはぐしゃりと@@の両手で握りつぶされなんとまあコンパクトに。

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