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ひどい熱に悩まされていても、@@は食欲を失わない人種だった。
どっと疲れが出てきた@@は涙ながらに「腹へったなぁ…」と呟く。そのあとの二人の行動たるや、光速と例えるのが一番適していて、押し合いへし合いしながら階下に降りていったのである。

向かった先は、もちろんキッチン。


「好意を持っている相手に、食事なんて作られた日には風邪なんてすぐに治る。そうは思わないかテツヤ」
「そうですね。@@くんにとってのその相手は赤司くんでないことは確かだと思います」
「これも花嫁修行の一環だ。…ん?花婿か?まあどっちでもいいな」
「すいません、@@くんと結婚する体で話進めるのやめてもらえますか」
「近い未来に起こる事実を述べているだけだ。結婚式には呼ぶから安心していいよ」
「ぶち壊しますよそんなもん」



「(うちで妖怪大戦争するのやめてくんないかなあ…)」


そうは思っても、@@はキッチンの扉の影から二人を止めにいくことはできなかった。だって怖いんだもん。
あまりにも不安だったのでこっそり様子を見にきたが案の定二人は@@に何かを作るつもりらしい。前科があるのでできることならご勘弁願いたい。



「病人食といえばお粥ですね」


黒子は自分の持っていた鞄をひっくり返す。するとドザァーと出てきたのは病人食の定番、レトルトのお粥各種。合算して12食分。

「随分買ってきたね」
「@@くんはたくさん食べる人なので」
「苦労しましたよ。これを買って赤司くんの先回りをするのは」
「そのアクティブさ、部活でも生かしてほしいものだよ」
「@@くん専用です」


調理台に敷き詰められたレトルトパックを見て@@は安堵した。
ただ温めて皿に盛るだけなら心配はないだろう。味付けも全てされていることだし。
黒子と赤司を信用できなかったことを少し申し訳なく思いながら@@は寝室に向かって踵を返した。





「これを全部混ぜます」

「(!?)」


「そうだね、それがいい」

「(何故!?)」




思わず叫びそうになったが、悪化してきた風邪が喉に攻撃してきてそれは叶わなかった。台にある、レトルトの種類。定番の白粥から梅、鮭、卵、五穀、高菜、かぼちゃに小豆粥なんてものまである。
何故混ぜる、どうして一緒くたにしようとする。



「よし鍋を借りよう」



犠牲になったのは@@の家で一番大きな鍋だった。
コンロに置かれた鍋に止める間もなく、二人はどちゃどちゃお粥を入れていく。この時点で@@はその場に額を押さえて崩れ落ちた。



「(明日……いや俺もう二度と学校行けないんじゃ…)」

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