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「何をしてるんだ」


練習をさぼるとはいい度胸だな。
赤司は威圧感のある声で部室の扉に張り付いているいつもの四人に向かって言った。真っ先に他の部員の凶行を止めてくれるはずの緑間さえ混じっていて赤司は僅かに眉間に皺を寄せる。

しかも今自分が発言したのが聞こえていないかのように四人は振り向きもしない。



「おい、お前ら」
『そこばっかりだめッスよお@@っちぃ…!』
「……」
『いいの間違いだろ大人しくしろよ…』
「………」


部室から漏れてくる艶めいた声に赤司の思考は停止した。
あの特徴的なしゃべり方の主は考えなくてもわかった。ではその後の声は誰のものだ。あの下半身にくるバリトンボイスはどちら様のものだ。

考えたくはなかったが、彼のハイスペックな思考回路は勝手に答えを導きだしポケットに忍ばせてある鋏を握れと命令を下してきた。


「まったく@@のやんちゃぶりには困ったものだね…全員そこを退いてくれるかな」
「怒るのはわかりますがここにいる全員が同じ気持ちだということを理解してください赤司くん」
「黄瀬ちんマジ捻り潰す絶対捻り潰す木っ端微塵にしてやる」
「なあもうドアぶっ壊していいよなもう我慢できねえ黄瀬殺す」
「二度と陽の光を拝めない体にしてやるのだよ」


相手が黄瀬なせいか、全員発言に容赦がなかった。背後にまとったどす黒い邪気は人間が容易に背負えるレベルではない。


「じゃあ全員の意見が一致したところでせーので行こうか」
「「「「意義なし」」」」



腕や首の骨をゴキゴキ鳴らして準備万端。全員の目がゾーンに入ったときと同じように光を放ち、次の瞬間には5本の足が扉を蹴破っていた。

ドガァン!と、轟音というより爆音に近い音が部室内に響き渡って中にいた二人は思わず飛び上がった。

「うおおお!?な、なに!?」
「びびびびびったッスーーー!!!」



……ん?


臨戦態勢で飛び込んだ五人は動きを一瞬止める。
想像していたものと違ったからだ。あんな声を出していたんだから衣服を乱した二人がくんずほぐれずしているのかと思えば別段@@の服は至って普通だし何より黄瀬がいつもの黄瀬じゃない。



「説明しろ」



笑顔の赤司が目と鋏をぎらりと光らせた。





「@@はすぐそうやってさぁー動物だったらなんでもいいの?」
「だってもふもふ…」
「お前俺のこと可愛いとか言ってたくせに浮気かよ!」
「犬じゃない青峰はかわいくないから問題外だろ」


経緯を説明すれば、全員の肩が安堵で降り下がったが黄瀬に対する不満がなくなったわけではないので一人一発、彼は殴られていた。
放っておくと@@が可愛さ故に保護しようとするので今黄瀬は緑間に尻尾を掴まれ逆さまに吊り下げられている。


「尻尾抜けちゃうッス!!!いたい!」
「抜けてしまえばいいのだよ…こんなものがなければ…!」
「今のうちに毛皮を剥いでしまえば二度と悪さは出来ないでしょうね…?」
「おや、僕の鋏の出番のようだね」
「ハゲになる!!@@っちー@@っちー!!ハゲにされちゃうッスーー!!」
「おい俺の毛皮に手出すなよ!!!」


ぼとり、緑間が黄瀬を取り落とした。
@@が黄瀬を庇っただと…!?
由々しき事態だ。@@はただ極上の毛皮を失いたくないだけであったが、黄瀬は嬉しそうに@@のほうへ駆けていく。

抱き上げられるよう腕を広げて待っていた@@の腕にダイブして黄瀬はご満悦。



「あーそうそうこの感触がいいんだって…ふひ…」
「@@っちが喜ぶなら俺一生このままでもいいッス…」
「そしたら一生…守ってやるよ」
「@@っち……!!!」

ぶわああと二人の周りに咲き誇る大輪の花の幻覚が見える。
ひしと抱き合う一人と一匹は見ているだけで腸が煮えくり返る。

これでいいのか?




いいわけがあるか!!寄り添う二人を見ていられないと怒りをあらわに全員が手を伸ばしてきた。しかしまあ四方八方から巨体が迫ってくればもみくちゃになるのは当然なわけで、
青峰に押しやられた黒子が蹴躓き前にいた赤司のシャツを引っ張った。よろけた赤司は横にいた緑間を犠牲に踏ん張ったが、よろけた緑間が前にいた紫原にぶつかってあら?という声をあげて紫原の腕が@@の首の後ろに当たった。


「ぶふっ!」
「!!!!!」


@@の顔は前に思いきり押し出されて抱き上げていた黄瀬の鼻っ面に唇がぶつかった。二人以外の顔から血の気が引いた。

ボウン!!!



柔らかな感触を感じたと思ったら@@の目の前はスモークを炊いたように真っ白に染まった。煙たさに咳き込んでいたら幸せで泣き出しそうな顔の黄瀬がよたりとしなだれかかってきた。


「ぺっぺ!押すなよ!ていうか今戻るなよ黄瀬!」
「う、奪われちゃったッス……もう死んでもいいかも…」
「ならここで死ねや黄瀬エエエエエエ!!!」
「生きて帰さないぞ涼太」
「男の嫉妬は醜いッスよ!!うわちょやめて!!!」



黄瀬にしばらくどころか永遠に、@@の前で狐に変化禁止令が下されたのは至極当然のことだった。




こがねいろの特権




チカ様リクエストの獣化話でした!黄瀬くんのネタを頂けたので使わせていただきました…!!
幼児化もいつかかきたいのでそちらのほうも頑張らせていただきたいなあと…
ラッキーハプニング黄瀬狐でございました、チカ様に捧げます…!リクエストありがとうございました!

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